カスハラの要件とは?判断基準と企業の雇用管理措置

 労働施策総合推進法は、カスタマーハラスメントの要件を次のとおり定めています。

  1. 職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であること
  2. 労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものであること
  3. 当該労働者の就業環境が害されること

 ①の要件につき、カスハラの主体は、法律上の利害関係者だけでなく、事実上の利害関係者も含みます。具体的には、既存顧客だけでなく、潜在顧客、取引先の担当者、近隣住民なども当たります。

 顧客等の言動が行われた場所は、被害者となる労働者が通常就業している場所だけでなく、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅も含みます。

 ②の要件につき、カスハラとなり得る顧客等の言動とは、その内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段・態様が相当でないものをいいます。すなわち、クレームの内容が相当であり、かつ手段・態様も相当であるものは「良質クレーム」といえますが、それ以外はカスハラになり得るのです。

 ③の要件につき、クレームの内容が不相当であるか、または手段・態様が不相当であるとしても、それだけでは直ちにカスハラに当たるわけではありません。カスハラと認められるためには、被害者となる労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じた場合でなければならないのです。その判断は、「平均的な労働者の感じ方」(社会一般の労働者)を基準とするものとし、本人の主観的な受け止め方を基準にするのではありません。したがって、客観的に見ると就業環境が害されたとまでは評価されないことがあります。ただし、「平均的な労働者」とは全労働者の平均をいうのではなく、同種(年齢、経験)の労働者を基準にすると解されます。例えば、新卒の労働者は社会人としても未熟ですから、ベテランを含めた平均を基準にすると、新卒の労働者にとって辛い出来事であったとしても、必ずしも就業環境が害されたとは評価されないケースが出てきてしまいます。そこで、この場合は若年・未経験の労働者を基準にすることになります。

 顧客等の言動が強い身体的または精神的苦痛を与える態様である場合は、1回の言動でも就業環境を害すると認められることがあります。反復性・継続性がなくても、言動の態様によってはカスハラに当たることがあるのです。

 以上より、クレーム対応においては、まず「良質クレーム」か「悪質クレーム」かを区分し、次に悪質クレームである場合は就業上の支障が生じたかどうかを客観的に判断することが重要となります。

 ところで、利害関係者の社会通念上許容される範囲を超えた言動が、労働者の就業環境を害することを抑止するため、また就業環境が害された後に適切な対応をするため、労働施策総合推進法は、事業主に対して雇用管理措置義務を課しています。

 雇用管理措置には、第1に、労働者の就業環境を害するカスハラへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置があります。

 第2に、相談の受付・対応をするための体制整備があります。相談窓口や通報体制を整備して、クレームが発生した段階でも受け付けられるようにしておきます。その上で、クレーム対応のアドバイスを店舗・窓口担当者に行うと、労働者の就業環境を害するカスハラに至ることを抑止することができます。それとともに、カスハラの通報が入ったら、適時適切に事後対応をする義務を負うことになります。

 この雇用管理措置義務は国に対する義務ですが、民事上も労働者に対して同内容の安全配慮義務を負うといえます。安全配慮義務は、「使用者が負う安全配慮義務」において詳しく説明しています。

 カスハラにおいて、暴行などの身体的攻撃を受けるケースは珍しいことではありません。「Q&A:顧客から暴行を受けたカスタマーハラスメントでも企業は損害賠償責任を負うか」を参考にしながら、安全配慮義務を履行するために、カスタマーから労働者の生命・身体を保護する措置を講じましょう。

 

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「パワハラ・カスハラが発生した、企業は調査と処分をどう進めるか」(対象:人事・法務部)

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