休職者の状況把握
休職中は、(1)休職者から治療経過、健康状態や生活状況等の定期的な報告を求める、(2)人事労務管理スタッフや管理監督者との定期的な面接を実施する、(3)これとは別に産業保健スタッフによる定期的な面接を実施する、(4)人事労務管理スタッフか産業保健スタッフが主治医と面談するなどの方法により、休職者の生活や治療の状況を把握した方がよいです。ただし、必ず定められたことを実行するのではなく、疾病の状況等に応じて柔軟に対応しましょう。
(1)について、休職中に生活リズムや睡眠覚醒リズムが回復・調整できたかが復職基準の一つとなりますので、職場復帰の直前だけでなく、休職後に治療の反応が見られたら生活記録表を書いてもらいます。
定期的な報告を義務づけるのであれば、あらかじめ就業規則に規定を設けておいた方がよいです。明文規定がなかったとしても運用として可能ですが、私生活の状況を報告することになるので、趣旨を説明した上で本人の同意を得た方がよいでしょう。単に口頭で承諾を得るだけでなく、その内容を理解した旨の文書にサインさせることが望ましいです。
(2)と(3)について、産業保健スタッフ、人事労務管理スタッフ、管理監督者の順に連絡窓口を担当します。特に産業保健スタッフが管理監督者を支援しつつ有機的に連携すると効果を上げることができます。
休職者に連絡を入れる時期については、休職者の健康状態にもよりますが、最初は人と話をすることも辛いことがあるので、あえて連絡しない期間を設け、比較的抵抗の少ない電話から始めることがあります。連絡を入れたときは、家族からも状況を聞くと同時に家族の不安を和らげることが肝要です。連絡の頻度についても、休職者が不調のときは柔軟に対応することとし、教条的にならず、状況によって回数を増やしたり、減らしたりすればよいでしょう。
健康状態が回復してきたら面談を始めることになります。ただし、いきなり会社に呼び出すよりも、自宅付近の方が抵抗が少なく、休職者も落ち着いて話をすることができるでしょう。慣れてきたら会社に来てもらうようにします。また、産業医や保健師などの産業保健スタッフが、月に1~2回面談し、職場復帰前には面談の機会を増やしていきます。特に産業医が常駐していない事業場では、保健師や看護師が休職者のフォローアップに重要な役割を果たすことになります。
外部EAP機関や社外カウンセラーを活用している企業もありますが、外部機関に任せきりでは効果は少なくなるでしょう。
(4)について、職場復帰が失敗した退職・解雇の効力が争われた事案では、裁判例は主治医や専門医からの医学的な所見を重視しており、これを徴求せずに退職や解雇を決定しても無効になるというケースが増えています。主治医と面談すること(できれば定期的に)は、現在のベースラインともいえます。面談により主治医の理解も得ないと職場復帰は成功しないでしょう。
人事労務管理スタッフの留意点
以上の対応は、休職者本人や家族の理解が得られなければならず、休職中の状況把握の方法を文書化しておき、事前に説明することが肝要です。休職者への事前説明とともに、休職者を安心させる工夫が必要です。当職が経験した例では、人事労務管理スタッフからの全く問題のない連絡メールだったのですが、うつ病の休職者は退職の不安を感じ、これも一つの事情として損害賠償請求の労働審判にまで至りました。当職の指導の下で人事労務管理スタッフが対応していたので、労働審判委員会は企業に責任がないとの心証を開示した上で調停が成立しましたが、単なる事務連絡では不安に思う休職者も出てくることを学びました。細やかでも一言の「声かけ」が重要ということでしょう。
休職中は家族の元で体調を回復させることが望ましいのですが、当職の経験した例では、家族に知識がないまま実家等に帰っても、家族は支援方法が分からず、本人も焦燥感から早めに自宅に戻り、最終的に自殺をしてしまいました。本人を受け入れる家族に人事労務管理スタッフや産業保健スタッフから十分な説明をしないと効果が小さいと思われます。
詳しくは、拙著「管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務」の第5章「メンタルヘルス不調の人事対応マネジメント」で論じていますので、併せてご参照いただければ幸いです。
[法律相談]
>> 企業の法律問題に関するご相談を面談またはオンラインにて承ります
[労働法務サポート]
弁護士佐久間大輔は、業務上外の傷病に関する休職・復職の対応に関するリーガルサポートサービスを提供しています。詳しくは以下のページをご参照ください。
>> 「休職・復職対応リーガルサポートサービス」
[サービス料]
メンタルヘルス不調による就業上の措置、休職・復職対応に関するサポート料金は、次のページをご覧ください。
>> 「労働問題の個別案件対応サービス料」
[人事部が注意すべき7つの落とし穴]
企業が絶対に避けるべき7つの休職・復職対応には、労働トラブルのリスクがあります。
>> 「休職・復職をめぐるトラブルリスク」
[弁護士によるメンタルヘルス対策のメリット]
ハラスメント対応やメンタルヘルス対策は、労働安全衛生に詳しい弁護士のサポートを受けることをお勧めします。
>> 「健康な働き方と企業の経営戦略」
>> 「弁護士に依頼するメリット」
[解決実績]
労働法務における主な解決実績は、次のページをご覧ください。
>> 「労働問題」
傷病と人事対応に関するその他のQ&A
- メンタルヘルス不調時の相談対応はまず誰が担当するか
- 病気を職場に知られたくない労働者に個人情報保護法上どう対応するか
- 病気社員を軽易な業務に就かせた場合の処遇は
- 病気社員の賃金等処遇を査定するに当たって留意すべきポイント
- 就業継続を希望する心臓病の社員を病者として就業禁止にすべきか
- 残業禁止の診断に上司や病気社員が従わない場合に懲戒できるか
- 職場復帰支援プログラムは必要か、休職開始時に必要な人事施策とは
- 定期的な報告・面接により休職者の状況を把握する
- 病気休職中の私用(運転免許取得)を懲戒できるか
- 復職判断と職場復帰支援プラン作成に当たって留意すべきポイント
- 受動喫煙を嫌悪する労働者から配置転換や座席移動の要望を受けたときは
- 就業中の居眠りを繰り返す病気社員に受診命令、懲戒をすることはできるか
- 就業中の居眠りを繰り返す病気社員に休職、異動、懲戒をすることはできるか
- 休職の診断書が提出されない場合は退職扱いにできるか
- うつ病による解雇や休職は可能か
- 採用面接でうつ病について聞くことはできるか
- 雇入れ時の健康診断結果により採用内定の取消しはできるか





