管理監督者の役割
メンタルヘルス不調になると、仕事のパフォーマンスの低下、勤怠の悪化、職場の人間関係の悪化が見られるようになります。
管理監督者は、メンタルヘルス不調のサインとなる行動を早めに発見して対応することが重要ですが、そのために日頃から労働者とコミュニケーションを取り、相談しやすい人間関係を構築することが重要です。
不調のサインが認められた労働者とは別室で面談をします。別室では話しやすい雰囲気を作った上で、当該労働者の言い分に耳を傾け、その発言を否定することなく、叱咤激励を厳に慎みます。とはいえ、腫れ物に触るように接することも逆効果です。管理監督者は、適宜質問をするなどして本人が抱える問題を把握して整理しつつ、本人にフィードバックします。
その結果、不調の原因が業務に起因するのであれば就業上の措置を講じます。精神疾患が疑われる場合は、産業保健スタッフへの相談や医療機関への受診を勧めることが必要です。
このとき留意すべきは、最初は人事労務管理スタッフが本人と接触することを避け、管理監督者の相談対応を支援することに徹することです。
人事労務管理スタッフの役割
ただし、本人のメンタルヘルス不調の原因が人事労務管理や管理監督者との人間関係に問題がある場合は、人事労務管理スタッフが当該労働者に直接相談対応をするようにします。
別室で面談をする際は、秘密を守ることを約束します。その上で、人事労務管理スタッフは、中立性を保ちながら話を聴き、相談内容を正確に把握することが重要です。場合によっては、上司や同僚からも話を聴いて客観的な情報を収集すべきです。
人事労務管理スタッフは、当該労働者の話から問題発生の原因は何か、解決可能な問題であるかを分析して、解決すべき問題やその手段のうち、どれを優先させるかを検討します。また、当該労働者の健康状態を把握した上で、本人のキャリアを踏まえた仕事の適性や指示方法、人員配置などについて管理監督者とコミュニケーションを取りながら解決策を検討します。管理監督者と本人との間に対立が生じているときは、仲裁に入ることもあります。
また、人事労務管理スタッフは、当該労働者が精神疾患を発病していることを早期に発見し、治療させることが重要です。そのため、問題行動の原因が病気によるものであると疑われるときは、本人の健康状態や問題事例を具体的に指摘し、治療の必要性があることを明確に伝え、治療を指示することを躊躇わない方がよいでしょう。当該労働者が受診を拒否する場合は、本人から同意が得られれば、家族に事情を話し、家族から受診を説得してもらう方が望ましいです。
一方、無断欠勤をした場合は年次有給休暇で処理をするのではなく、問題解決のために必要な注意を与えつつ、就業規則に基づき賃金カット、さらには懲戒を含めた厳正な対処をします。
第三者である人事労務管理スタッフは、悩んでいる労働者には認識できていない事実を冷静に把握し、現実的な解決策を提供することが必要です。
トラブル懸念時における人事労務管理スタッフの対応
メンタルヘルス不調となった労働者が損害賠償請求をする意向を示した場合は、管理監督者に任せきりにするのではなく、人事労務担当者が直接対応すべきです。
人事労務管理スタッフが当該労働者と面談する際には、その主張内容を正確に把握するため、客観的な立場を維持しながら本人の話を聞くようにします。その内容をもとに管理監督者や同僚からも話を聞いて情報を収集します。また、当該労働者は組織文化や組織風土に馴染めないことから、メンタルヘルス不調になっているので、これを理解しないと本人との信頼関係を構築できません。だからといって、本人と同じ感情を共有すると事実を正確に把握し、冷静に現実的な解決策を模索することができなくなってしまいます。
当該労働者との面談や管理監督者からの聴取など必要な調査をした上で、本人が抱える問題が業務に起因しているか、それとも業務外要因や個体側要因によるものか、またトラブルの火種が燻る背景に人事労務管理上の問題点があるかを見極めます。
当該労働者が抱える問題が職場のストレス要因にあるとしたら、管理監督者と協議して業務内容や人員配置の見直しをするなどして、労働トラブルを未然に防ぎます。
さらに、人事労務管理スタッフとしては、▽当該労働者の請求や主張の内容は何か、▽その請求に根拠や証拠はあるか、▽法律上の紛争となり得るか、▽どのような手続を選択する可能性があるか、▽解決は可能であるかといった事項を検討することも必要です。
労働トラブルが懸念される場合は、弁護士を含めて専門家が連携して人事労務管理スタッフや管理監督者をサポートすることにより、メンタルヘルス不調者の適正配置など人事労務管理上の措置を講じてトラブルを防止することも検討することになります。
詳しくは、拙著「管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務」の第3章「メンタルヘルス不調の防止マネジメント」で論じていますので、併せてご参照いただければ幸いです。
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