【事案と受任前】
創業家の株式会社社長が、貸金業者とその関係者より借金をするため、①会社を連帯債務者とする公正証書を作成したり、②会社の社屋に根抵当権・賃借権の仮登記を設定したりし、③会社からも借金をしました。また、④社長は創業家の所有する株式の持株会社(有限会社)の持分を支援者と称する人物に贈与しました。社長は退任しましたが、⑤株主総会には前社長、代理人弁護士、「支援者」が借金や退職慰労金の支払いを求めてきました。
【弁護活動と結果】
前社長の背任行為を追及し、「支援者」等の要求には応じないことを基本方針にして、①については強制執行停止決定の申立及び請求異議訴訟を提起し、②については仮登記抹消登記手続請求訴訟を提起し、③については貸金請求訴訟を提起するとともに、前社長の債権者破産申立をし、④については詐害行為取消訴訟を提起しました。⑤については、株主総会で現経営陣が毅然たる態度を示すよう指導し、調査委員会の設置を決議し、その後、弁護士が主導で前社長や代理人弁護士、「支援者」から事情聴取を行うなどして、前社長の背任行為を認定し、退職慰労金の支給を止めました。また、前社長の破産管財人に全面的に協力して、破産決定後は詐害行為取消訴訟に補助参加をしました。その結果、①②④の各訴訟は勝訴的な和解が成立し、③は全面勝訴判決を受けて、破産においては配当を受けるなどして、株式会社に実害をもたらすことを最小限に抑えました。
【解決のポイント】
現経営陣だけでなく、労働組合も含めて全社一丸となって、「会社を守る」という共通認識で、株式総会や訴訟等に対応したことが解決のポイントであると思います。弁護士が対処方針を示して意思統一をさせつつ、複数の事件を処理していったことが困難でした。