長時間労働防止
1. 労働時間の適正把握と長時間労働の是正
政府が閣議決定した、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、「『労働時間を正確に把握すること』及び『残業手当を全額支給すること』が、『残業時間の減少』、『年次有給休暇の取得日数の増加』、『メンタルヘルス状態の良好化』に資する旨の分析がある」とし、「各職場において、これまでの労働慣行が長時間労働を前提としているのであれば、企業文化等の見直しを含め、それを変え、定時退社や年次有給休暇の取得促進等、それぞれの実情に応じた積極的な取組が行われるよう働きかけていくことが必要である」と指摘しています。
そこで、まず、各職場において労働時間性の有無を検討することが必要となります。労働時間性を難しく考える必要はなく、各職場の実情を踏まえて検討しましょう。
各職場において労働時間該当性を精査したら、次に労働時間の把握方法を検討します。
企業としては、労働時間の状況を適正に把握し、疲労やストレスの蓄積の観点から労働時間性を検証した上で長時間労働を確認した場合は、長時間労働の要因を除去するとともに、少なくとも過労死等防止対策大綱が例示する対策を講じることにより、長時間労働そのものを是正しなければなりません。
長時間労働を是正できたとしても、労働者が疲労やストレスを蓄積しているとしたら、これを解消しなければなりません。その手段として、過労死等防止対策大綱は年次有給休暇の取得と休息時間の確保を推奨しています。
2. 長時間労働者に対する面接指導と就業上の措置・職場環境改善
長時間労働を是正したとしても、それ以前に長時間労働に従事した従業員の疲労蓄積が認められる場合は、医師による面接指導を実施してメンタルヘルス不調や高血圧などの健康障害を早期に発見し、これを軽快させるための就業上の措置を講じることが肝要です。
事業者は、休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた時間(時間外労働・休日労働時間)が1か月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められ、申し出を行った労働者に対し、医師による面接指導(問診等による心身状況の把握、面接による必要な指導)を行わなければなりません。
そして、事業者は、面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければならず、また、医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業制限または要休業(休暇・休職)といった就業上の措置を講じます。就業制限には、労働時間の短縮、出張や労働負荷の制限、作業や就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換などがあります。この場合、医師の面接指導を経ずに、保健師等による相談対応の結果だけで就業上の措置を講じることはできません。当然のことですが、就業上の措置は、健康保持に有害な措置や労働者に著しく不利益な取扱いをするものであってはなりません。
長時間労働者の健康を保持するための措置を強化するという意味で一次予防(原因の除去)の側面も有しています。特に労災認定された自殺事案では長時間労働が多いので、面接指導を実施する際には、うつ病等のストレスが関係する精神疾患等の発症を予防するためにメンタルヘルスケアにも配慮することが必要でしょう。
また、法令の要件に該当しなくても、事業者は、過労死との関連性が生じるとされている月45時間以上の残業により、疲労の蓄積が認められ、または健康上の不安を有している労働者に対して、面接指導の実施または面接指導に準ずる措置を講ずるよう努めなければなりません。努力義務とはいえ、個々の事業場で実情に応じた基準を定め、面接指導制度を活用していくことが重要です。
労働者個人の就業上の措置と平行して、職場環境の改善と労働者全体の健康管理を図ることが重要です。
これらの措置が長時間労働をめぐる労使紛争を防止し、リスクマネジメント(危機管理)につながるのです。
面接指導等の流れ
資料出所:厚生労働省
(注)現在、面接指導の要件は月80時間超の時間外労働に緩和されている。また、産業保健推進センターは産業保健総合支援センターに名称変更されている。
※弁護士佐久間大輔との間でメンタルヘルス対策サポート契約を締結された後に書式や規程を提供します。
[書式]
◆医師による面接指導申出書
◆勤務状況報告書
◆面接指導結果提供同意書
◆就業上の配慮措置の決定に関するお知らせ
◆リスクアセスメント・チェックリスト(労働時間、健康診断・面接指導)
[規程]
◆労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのための規程
[企業研修]
長時間労働防止対策に関する企業研修は「労働安全衛生マネジメントの企業研修」をご覧ください。
[Q&A]
長時間労働防止対策については、次のページをご覧ください。
>> 「Q&A:メンタルヘルス対策・過労死防止」
[サービス料]
リーガルサポートサービスの料金については、次のページをご覧ください。
>> 「メンタルヘルス対策の制度構築サービス料」
>> 「労働問題の個別案件対応サービス料」