事業承継法務コンサルティングの概要
経営者が過去の成功体験に固執したり、起業家精神から守りの姿勢へ比重が移ってきたりすると、市場や競合など外部環境の変化を看過して経営戦略を誤ることがあります。高齢の経営者が守りの経営に陥っているようでしたら、継続企業の前提が崩れますので、事業承継の必要性が高まっているといえます。
経営者の引退年齢は70歳前後が多いですが、この年齢に達すると攻めの経営をすることは難しくなってきます。事業承継に必要な期間は5~10年と言われているため、60歳頃から事業承継に着手した方がよいでしょう。実際には50代から準備を始めた方が、会社、経営者、後継者にとって効果が大きくなります。
事業承継を進めるに当たって、まずは親族内で後継者を探しますが、親族内で適当な後継者がいなければ、企業内や外部から後継者を選定します。
中小企業の経営者や後継者その他の相続人にとって、資金調達や節税を重視するのは当然のことともいえます。しかし、それにより事業承継を遅らせたり、不十分な対策しかしていなかったりすると、経営者の病気や死亡により経営が停滞・混乱するおそれがあります。事業承継を円滑に実行することは至上命題となるのです。
事業承継では、経営を安定化させるため、株式を親族内で配分する割合、株式や事業用資産の集約・移転の方法を決めなければなりませんが、それには会社法等の法律知識が必要とされます。また、非後継者である相続人への配慮を怠ると、遺産分割や遺留分をめぐる紛争が起こってしまいます。そのため、早い段階で弁護士とともに株式等の承継や遺留分特例など相続対策について検討し、弁護士が代理人となって株主等の関係者と交渉をすることが、円滑な事業承継への近道です。
また、中小企業診断士が、環境分析、長期経営計画の策定・実行といった経営の磨き上げ、承継時期や後継者の選定・育成といった事業承継計画の策定・実行を助言し、さらにポスト事業承継についても、経営者や後継者を伴走支援することが望ましいです。
後継者候補が見つからなければ、M&Aにより第三者に経営してもらうことになりますが、弁護士兼中小企業診断士であれば、経営の磨き上げにより企業価値・事業価値を向上させるとともに、他の士業では受任できないM&Aの交渉代理をすることができます。
事業承継の必要性を認識しましたら、事業承継の方法や進め方をどのようにすればよいのかを検討するには、まず現状分析から始まります。
会社案内、定款、商業登記や不動産登記、株主名簿、財務諸表や確定申告書(過去3期分)、商品説明書、組織図、就業規則、各種規程類などの資料をお持ちになり、ご相談ください。
《コンサルティング(助言・提案)の概要》
- 経営者や後継者の状況、会社の財政状態や経営成績、取引先や借入先、組織体制や規程等についてヒアリングをし、現状を把握した上で、経営理念、課題設定、経営戦略や事業戦略に関する助言、提案をします。
- 長期経営計画、計数計画、各種施策の実行計画(アクションプラン)の策定と実行に関する経営面および法務面の助言、支援をします。
- 事業承継を機に新事業活動や経営力向上に取り組む場合、「経営革新計画」や「経営力向上計画」の策定に関する助言、支援をします。
- 承継時期、後継者の選定・育成や自社株式・事業用資産の承継について、事業承継計画の策定と実行に関する経営面および法務面の助言、支援をします。
- 経営者の遺言を作成します。経営承継円滑化法に基づく遺留分特例について諸手続の代理人を務めます。また、相続人間に争いがない場合は遺言執行者に就任します。相続人間に争いが発生する可能性が高い場合は遺言執行者に就任しない代わりに、後継者に対する遺留分侵害額請求事件の代理人を務めます。
- 経営管理体制や組織体制に関する助言、支援をするとともに、就業規則等の規程類や社内の実情に応じた文書の作成を承ります。
- M&Aや廃業に関する経営面および法務面の助言、支援をします。弁護士としてM&Aの買い手との交渉や廃業に関する金融機関との交渉の代理人を務めます。
- 経営者の保証契約の解除、後継者の保証契約の必要な範囲での締結や適切な保証金額の設定について、弁護士として金融機関との交渉の代理人を務めます。
- 中小企業の経営が窮境に陥っている場合、事業再生計画または経営改善計画、金融支援案(借入金返済計画)の策定に関する助言、支援をするとともに、弁護士として金融機関との交渉の代理人を務めます。
- 全部または一部の事業承継ができない場合、弁護士として法的債務整理手続または準則型私的整理手続の代理人を務めます。会社との顕在的な利益相反がない場合は保証人である経営者の債務整理手続の代理人を務めます。
[Q&A]
事業承継に関する施策は「Q&A:事業承継」をご覧ください。