飲食店店長が長時間労働や経営者のパワハラにより自殺未遂をした事案
事案の概要
本件は、飲食店店長(男性・自殺未遂時29歳)が、朝は仕込みから夜は閉店後の後片付けまで十分な休憩も取れずに長時間労働に従事していたのに、社長から暴行や叱責等のパワーハラスメントを受けたことから、急性ストレス反応を発病し、2005年5月20日、店内で自己の左手首と頚部を包丁で切りつけ、自殺未遂を図った事案です。
自殺未遂の原因
暴行が自殺未遂の一因となったことは明らかですが、長時間労働が急性ストレス反応の要因となったことは間違いありません。
本件では、飲食店は午前11時30分に開店し、翌午前0時に閉店するので、開店の1時間30分前に出勤して仕込み等の開店準備をし、開店した後は店舗営業に必要な業務の全般を担当して昼食と夕食を摂取するときの各15分間以外は常に店舗にいなければならず、午前0時に閉店した後は片付け、清掃、翌日の準備、売上の集計と日報の作成等を行い、翌午前1時頃に業務が終了していました。しかも、店長とアルバイト1名の二人勤務体制なのに、店舗は年中無休でした。
それだけでなく、売上ノルマを課せられ、未達となると借入によって補填させられた挙げ句、社長から暴行や暴言を浴びせられ、これが急性ストレス反応の主因といえます。
予防のポイント
飲食店の店長は、営業開始時間前の仕込みから営業終了時間後の片付けまで店舗内で仕事をすることが多く、長時間労働になりがちです。しかも、売上向上のストレスにさらされ、しかも上司や社長からパワハラを受けるというケースは本件にとどまりません。
暴行や暴言といったパワハラは論外ですが、店長が売上向上の一翼を担っているとはいえ、最終的な経営責任は取締役が負うのですから、ノルマを課して人件費を削ることにより店長を長時間労働に駆り立てるべきではありませんでした。
長時間となる店舗営業は飲食店にとどまりませんので、他の業態についても、日頃から、店長が休憩、休日・休暇を取得できるよう指導したり、人員配置の見直しや人員の増加をしたりすることが重要です。
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