【事案と受任前】
中途採用者が業務能力の不足により仕事の遅れや放置等が続いたことから、会社が解雇を前提とする退職勧奨をしたところ、当該従業員が弁護士に依頼して解雇無効の内容証明郵便を送ってきました。
そこで、知人の社会保険労務士より依頼を受け、当職が代理人に就任して、当該従業員の弁護士と交渉を開始しました。
【弁護活動と結果】
受任した時点で年末まで1か月強でしたので、会社との協議で年内に合意成立を目指すこととしました。そこで、まずは解雇予告期間を30日超とし、解雇日を大晦日とする会社の解雇予告通知とともに、当該従業員が一番反論しづらいと推察した学歴詐称を中心に主張し、解雇日までに退職合意が成立するのであれば解雇予告を撤回する旨表明した当職の受任通知を相手方弁護士に送付しました。
並行して、能力不足である具体的な事情として、職務の怠慢・失念、納期遅延と追加費用の発生、社内ルール違反等の事実と時期、これに対する会社側の指導内容等を詳細にまとめ、これを裏付ける証拠を表示した一覧表を作成する作業をしました。
上記の作業を継続しつつ、早期に相手方弁護士と面談したところ、相手方弁護士は、示談で解決する方針を示したものの、解決金について会社の想定を超える金額を提案してきました。
これに対し、完成した学歴詐称の調査結果や上記の一覧表を添付して解雇が有効であることを具体的に主張し、これを前提にしつつ、生活状況にも配慮した解決金を提案する書面を送付しました。
その結果、当該従業員は解雇理由には一切反論せず、会社提案の解決金を受諾して、会社が提示した合意書案を微修正した上で仕事納めまでに退職合意が成立し、会社は解雇予告を撤回しました。
【解決のポイント】
受任時から裁判をも見据えた解雇理由の取りまとめと証拠収集をすることとし、裁判で通用するような解雇理由を主張する方針を採ったことが、解雇有効を前提した金銭解決をもたらし、しかも当該従業員の要求の半分未満の金額で妥結することにつながりました。しかも、裁判に至らず年内に示談で終了し、受任時に立てた獲得目標を達成できました。
本件は、従業員に弁護士が就きましたが、本人のみが退職勧奨の撤回を要求してきたとしても、会社としても弁護士のサポートを受けながら詳細な解雇理由書を作成し、丁寧に会社の主張を説明することが、手間はかかるものの、早期解決に結びつくといえます。
従業員が争うのであれば裁判で受けて立つ方針であったとはいえ、経営陣としては紛争を抱えたまま年を越すことを回避できたことで、感謝のコメントをいただきました。