【事案と受任前】
マンションの分譲会社が、管理人室を自社の専有部分であるとして、区分所有者で構成される管理組合に対し賃料の支払いを請求してきました。区分所有者の中には分譲会社に従うことを提案する者もいましたが、管理組合総会において、最高裁判例からすると従う必要はないとの結論に達し、分譲会社の請求を拒絶しました。すると、分譲会社は賃料支払い請求訴訟を東京地裁に提起してきました。
先輩の弁護士から応援の依頼を受けて、当職が代理人に就任しました。
【弁護活動と結果】
分譲会社の請求を争うとともに、管理組合からも、管理人室が法定共用部分であるとして、分譲会社に対し、賃料相当額の不当利得返還を請求する訴訟を東京地裁に提起しました。
東京地裁平成10年12月21日判決(判例タイムズ1066号274頁)は、管理組合の主張を受け入れ、管理人常駐の必要性・設備、管理人室の性質・住居性、分譲時のパンフレット、配置図・平面図、売買契約書、管理規約、従前の利用状況、公租公課の負担等から、管理人室は一体として法定共用部分であることを認定しました。
【解決のポイント】
管理人室が法定共用部分に当たるとの最高裁判決が出ていましたが、分譲会社と争うことをためらう区分所有者がいる中で、管理組合総会で管理人室を法定共用部分であると主張して訴訟を提起することを決議し、区分所有者が一致団結したことが解決のポイントであると考えます。弁護士が対処方針を示して意思疎通を統一させつつ、分譲当時の資料を収集させ、構造上の独立性や利用上の独立性を検討して主張を展開しました。
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