【事案と受任前】
父親の代から一筆の土地を2名の賃借人に低額の賃料で貸していたことから、相続を機に賃料の増額請求をしたいとの依頼を地主より受け、当職が代理人に就任しました。賃料増額請求をしたところ、その相手方となった賃借人から借地権と底地権の一括売買の提案を受けたのですが、これを拒否する一方、条件次第で借地権譲渡の承諾をすることを表明し、この契約締結交渉の依頼も受けました。
【弁護活動と結果】
まず賃料の低い方の賃借人Aから賃料増額請求をし、増額の幅が決定したところで、他方の賃借人Bにも賃料増額請求をするとの方針を立てました。賃借人Aに賃料増額請求をしたのですが、これに応じなかったので、地主は簡易裁判所に調停を申し立てました。
調停の相手方となった賃借人Aは、賃料増額請求を拒否する一方で、借地権と底地権の一括売買の提案をしてきました。依頼者の地主は先祖伝来の土地であることを理由に底地の売却を拒否することにしたものの、土地上には木造家屋(非堅固建物)が建っており、土地の有効活用ができておらず、そのため賃料が低くなっていたので、調停の場で、条件次第で借地権譲渡の承諾をすることを表明しました。
賃料増額請求の調停自体は不成立となったので、不動産鑑定士に継続賃料額の鑑定書を作成してもらった上で、地主は賃借人Aを被告として地方裁判所に訴訟を提起しました。
それとともに、借地権譲渡を促進する意図もあり、不動産鑑定書をもとに賃借人Bにも賃料増額請求をしたところ、鑑定書から計算された継続賃料に増額するとの示談が成立しました。
この示談の結果をもとに、賃借人Aに賃料増額の主張をしたところ、裁判所から和解勧告があり、賃借人Bとの示談により増額した継続賃料と同額で賃料増額を認めるとの和解が成立しました。
他方、堅固建物に改築することを希望した借地権譲受人に対し、借地条件変更承諾料の増額や更新料の設定を何度も要求して、これを認めさせました。
これにより賃料は2段階で増額させることができ、当初の約1.8倍となりました。さらに、地主は多額の借地権譲渡・借地条件変更の承諾料を受領することができました。
【解決のポイント】
賃料増額については、両方の賃借人に対して同時に請求するのではなく、増額請求が認容される可能性が高い(賃料の低い)賃借人の方から請求し、借地権譲渡の話が出てからは、この賃借人に対する賃料増額請求訴訟の結論を待たず、他方の賃借人にも継続賃料の鑑定書に基づいた賃料増額請求をすることにより、2名の賃借人が借地権譲渡の方針を採るように仕向けることができました。
また、借地権譲受人との間では、仲介業者を介して多数回にわたり交渉し、文書による主張も交えて借地条件変更の承諾料を増額させ、譲受人が当初拒否していた更新料についても粘り強く設定するよう要求して遂にこれを認めさせました。
最初に賃料増額請求をしてから約2年半の期間を要しましたが、できる限り地主の収益につながるよう尽力したことで、地主は多額の経済的利益を獲得し、今後増額した賃料収入を安定して得ることができるようになりました。
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