自殺未遂を起こした新入社員への使用者の損害賠償責任は

 新入社員が、研修で講師から厳しく指導されたパワハラにより、会社員としての自信をなくし、精神的にまいってしまい、試用期間中に社員寮で自殺未遂を起こした場合、使用者はどのような責任を負うことになるのでしょうか。

 使用者の「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう」に措置する義務(最高裁判決)は、業務に直接関連しない、いじめやパワハラの事案でも妥当します。

 上司やそれに類する立場の者(研修講師)が新入社員を個々の労働者の個性、能力等に応じて適切に指導監督しなかったばかりか、新入社員に対してその裁量を逸脱した不適切な言動を行い、または裁量逸脱の不適切な言動を放置して、職場環境を悪化させた場合には、安全配慮義務違反となります。この評価に当たっては、若年であること、新入社員であることから、ストレス対処能力がまだ低いという点が考慮されます。

 新入社員が研修講師からその裁量を逸脱した不適切な言動を受けたことにより、精神的ストレスを受けて精神疾患を発病し、自殺未遂をして休業療養をしているというのであれば、使用者は損害賠償責任を負うことになります。

 パワハラと認められるのであれば、原因究明と再発防止策を検討することが必要です。

 新入社員教育研修の内容や講師の再検討については、担当部署や人事労務担当者だけでなく、衛生委員会に資料を提出して、メンタルヘルス対策を含めて調査審議した方がよいでしょう。

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