お金を貸すときに作成する契約書は?

 付き合いのある業者から頼まれて、お金を貸すことはよくあります。知人といっても確実に弁済してもらえないと困ります。

 金銭を貸し付けてその返還を約束することを金銭消費貸借契約といいます。金銭の貸し借りでトラブルになるのは、借用証書などの金銭消費貸借契約書(借用証書)を作成していないケースです。無用の金銭トラブルを避けるためには、金銭消費貸借契約書(借用証書)を作成しておくことが重要です。

 改正後の民法では金銭の授受がなくても書面でする消費貸借契約が明文化されたので、契約書の作成は金銭の授受と同時である必要はありません。

 金銭消費貸借契約書(借用証書)借用証書の内容が法律で定められているわけではありませんが、契約日、貸し付けた金額、支払いの期限(一括払いの日、分割払いの回数や金額など)、支払方法(持参、送金)などを借用証書に明記します。利息は取り決めがあるときに発生します。また、連帯保証人を付ける場合には、口頭では足りず、契約書に連帯保証を明記します。

 分割払いであれば、支払の期限や分割金の額を明確にし、銀行振り込みの場合は振込手数料を借り主の負担とするなどを金銭消費貸借契約書(借用証書)に書いておくとよいでしょう。また、確実に分割払いをしてもらうために、2回以上支払いを怠ったとき、または遅滞した額が一定額に達したときは残金を一括して支払うとの「期限の利益喪失約款」を借用証書に入れてください。例えば、100万円を貸すとき、毎月末日に10万円ずつ、10回払いをするのであれば、その旨を明記するとともに、返済が2回以上遅れ、遅滞額が20万円に達した場合には、残金を一括で支払うとの条項を金銭消費貸借契約書(借用証書)に入れましょう。この条項を入れておくことが、債権の迅速な回収を図るために必要です。他方、借り主からすると、分割払いを遅延しても、当然に期限の利益を喪失するのではなく、貸し主から相当の期間を定めて催告しても支払いをしなかったときを期限の利益喪失事由にするとか、貸し主からの通知があって初めて期限の利益を喪失するといった制限をかけておくとよいです。

 また、金銭消費貸借契約書(借用証書)において、支払いを怠った場合の遅延損害金の取り決めをすることもできます。合意がなくても、5~6%の遅延損害金を請求できます。10%程度の遅延損害金を支払うとの条項を金銭消費貸借契約書(借用証書)に入れておいた方が、相手方に心理的プレッシャーを与えられます。

 さらに、確実に返済してもらうためには、連帯保証人を付けた方がよいです。連帯保証人については、金銭消費貸借契約書(借用証書)に署名して、実印を押捺し、印鑑登録証明書を添付してもらいましょう。ただし、改正後の民法では個人が事業資金の借入を保証する場合に個人保証人を保護する規定が設けられました。すなわち、個人が、事業のために負担した貸金等債務(金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務)を主たる債務とする保証契約を締結する場合は、その契約に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示しなければ、保証契約の効力は生じません。なお、主たる債務者が法人である場合の取締役や過半数株主、共同個人事業主・事業専従者は保護の対象外です。

 また、支払いを怠ったら直ちに財産を差し押さえたいという場合もありますので、保証契約に限らず、公証役場で公正証書を作成することをお勧めします。作成手数料はかかりますが、債務者が金銭の一定の額の支払いを約定するとともに、債務者および連帯保証人が契約に定める金銭の支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服するとの条項(強制執行認諾条項)を入れれば訴訟を起こさなくても強制執行をすることができます。契約書に公正証書作成義務を明記しましょう。

 金銭消費貸借契約書(借用証書)や公正証書の作成について、弁護士が対応することができますし、金銭トラブルが発生した場合も、訴訟や調停などの対応をしますので、借用証書や支払明細など資料をお持ちになって弁護士にご相談ください。

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