根保証とは何か?

 知人の業者にお金を貸したり、取引先に商品を売ったりしたときに、貸金や売掛金を確実に回収するため、借り主や買い主に保証人を立ててもらうことがあります。

 同じ業者に、お金を頼まれたら貸し、さらに商品も継続して売る場合、逐一、保証人にサインをもらうことは手数や時間がかかるので、根保証をしてもらうことが考えられます。

 根保証契約とは、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約をいいます。根保証のうち、個人の保証人が一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約を締結することは、長期間かつ多額の責任を負わせることになりかねないので、民法が個人根保証契約に制限を課しています。ただし、保証人が法人である場合は根保証に制限は課されません。

 改正前の民法では、貸金等債務が含まれる保証が対象となるので、売掛金債務のみの保証については民法の制限の対象になりません。これに対し、改正後の民法では制限の対象が拡大されました。個人根保証契約の制限の対象は、貸金等債務や売掛金債務、賃借人の債務など全ての主債務に関するものです。

 まず金額についての制限を述べます。保証人は、主たる債務の元本・利息・違約金・損害賠償のほか、保証債務について約定した違約金・損害賠償の責任も負うのですが、その全部にかかる極度額を限度として、その履行する責任を負うとされています。しかも、極度額を書面で定めなければ、根保証契約の効力は生じません。

 次に保証期間についての制限です。主たる債務の範囲に金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務(貸金等債務)が含まれる個人根保証契約において、主たる債務の元本の確定すべき期日は、元本確定期日の定めがない場合は根保証契約の締結の日から3年を経過する日とし、元本確定期日が根保証契約締結日から5年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは無効とされ、3年を経過する日に短縮されます。元本確定期日の変更をする場合も制限があります。

 さらに、改正後の民法では、主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる個人根保証契約を締結する場合は、その契約に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示しなければ、個人根保証契約の効力は生じません。なお、主たる債務者が法人である場合の取締役や過半数株主、共同個人事業主・事業専従者は保護の対象外です。

 しかも、改正後の民法では、主たる債務の範囲に事業のために負担する債務(貸金等債務に限定されない)が含まれる個人根保証の委託をするとき、主債務者は、その委託を受ける者に対し、①財産・収支の状況、②主債務以外に負担している債務の有無やその額と履行状況、③主債務の担保として他に提供し、または提供しようとするものがあるときは、その旨・内容といった情報を提供する義務を負います。主債務者が情報不提供や虚偽報告をした場合にこれを債権者が知り得たときには、個人根保証人は保証契約を取り消すことができます。なお、この制限は事業のために負担する債務を主債務とする個人保証の場合にも適用されます。

 このように個人根保証契約は、保証人に都度サインをもらう必要がないなどの利便性がある一方、法律上の制限があるので、貸付や取引のたびに連帯保証人を個別に立ててもらう方がよいこともあるでしょう。

 根保証を利用するのが適当か否かはケース・バイ・ケースであり、実情に応じた個人根保証契約書を弁護士が作成することもできますので、ご相談ください。

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