消滅時効の完成猶予事由は債権者による裁判上の請求、更新事由は債務者による承認です。連帯保証人がいる場合、主たる債務者が弁済をしている、主債務者に対して請求をしたといった時効の完成猶予の事由は、連帯保証人に対しても、その効力が生じます。
これに対し、連帯保証人が一部の弁済をしたといっても、それは主たる債務者に対して消滅時効の完成猶予の効力が及ぶわけではありません。保証債務は主たる債務を担保するものですから、主債務が成立しなければ保証債務も成立しませんし、主債務が消滅すれば保証債務も消滅します。とすると、連帯保証人が一部の弁済をしていたとしても、主たる債務者との関係では時効が進行しますので、主債務について消滅時効が完成すれば、保証債務も消滅します。
他方、連帯保証人に対して請求した場合は消滅時効の完成は猶予されるのでしょうか。改正前の民法では、連帯保証人に対する履行の請求は、主たる債務者に対しても、その効力が生じますので、連帯保証人に対する請求は主債務者との関係でも時効の完成猶予の事由となります。これに対し、改正後の民法では、連帯保証人に対する履行の請求は、主債務者にはその効力は及ばず、別途主債務者にも請求をしなければ主債務者との関係で時効の完成は猶予されません。
時効の援用をする権利を有する者は、時効により直接利益を受ける者をいいます。改正後の民法は、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者として消滅時効の時効援用権者に含めています。したがって、連帯保証人は主たる債務の時効に関する援用権者となりますので、消滅時効を援用して主債務とともに保証債務も消滅したと主張することができます。連帯保証人が主債務の消滅時効完成前に一部の弁済をしていたとしても、原則として主債務の時効援用をすることができます。
ですから、消滅時効の完成を阻止するには、主たる債務者や連帯保証人に裁判上の請求等をしていくことが必要です。
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