中小企業の多くで採用されている機能別組織は、デメリットとして、業務の分業化が進むと部門間の人事交流が停滞し、機能横断的な連携や組織内の情報共有が困難となる、経営トップに権限が集中するため、例外的事項への対応だけでなく、部門間の対立の解消などにも対応せざるを得ず、経営トップの負荷が大きくなる、経営トップに各部門から情報が集約されるため、迅速な意思決定が困難となる、環境変化や顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応できない、各部門長が担当領域に専門化するため、全社的視点を欠き、マネジメント力のある後継者の育成が困難となることなどが挙げられます。
デメリットの解消策として、権限委譲や部門間の配置転換が挙げられますが、さらにチーム制を導入することも考えられます。
プロジェクトチームとは、部門を横断して専門性の高いメンバーを招集し、プロジェクトごとに結成される一時的な組織であり、個々の製品やサービスの最適性を高めるものです。
チーム制のメリットとして、▽多様なスキルや経験を持つ従業員の協働や交流により、機能横断的なコミュニケーションが活発となり、情報共有が進み、組織が活性化する、▽環境変化や顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応できる、▽従業員が経営に関する意思決定に参加するため、モチベーションや全社的な責任意識が向上する、▽プロジェクトマネージャーに権限を委譲するため、後継者や若手人材を育成できることが挙げられます。
プロジェクトごとでなくても、例えば、製造工程でチーム制を採用する場合は、チームリーダーとなる熟練技術者がOJTによりリーダーの熟練技術を承継することにより、若手作業者の技術力を向上できます。
チーム制のデメリットとして、プロジェクトごとの最適化がなされ、知識がプロジェクト固有にとどまり、専門性を高められないことが挙げられます。これを解消するため、プロジェクトチームを編成する前提として、個々の製品に関する技術や知識を組織知として体系的・継続的に蓄積できる仕組みを整備します。
また、個人主義や社会的手抜きが発生するおそれがあります。そこで、プロジェクトチームを編成する際には、社内公募制を導入し、従業員が直属の上司を介さずに応募できるようにする、機能横断的にメンバーを選出する、共通目的と貢献意欲を持ったメンバーで構成するといった対応策を講じます。また、チームの運営に当たっては、メンバーのチャレンジ意欲を向上させる目標を設定して課題に対する自我関与度を高める、個人の業績による評価に加えて、メンバーのチームへの貢献度やチーム全体の成果に応じた評価制度を導入する、チーム全体の成果や目標達成度を各メンバーにフィードバックする等の措置を講じます。集団の中では個人のパフォーマンスが低下する傾向があるので、各メンバーのモチベーションを維持する工夫が必要です。
外部企業とプロジェクトチームを編成する場合も同様のメリットを享受できますが、外部企業が機会主義的な行動を行うリスクがあるため、これを業務提携や資本提携など企業間合意により抑制すること、チームにより協力関係を強化・継続し、外部資源への取引依存リスクを低減することに留意しましょう。