職場のモラールを向上させるリーダーシップとは?

 リーダーシップには、集団の課題解決を促す行動をする目標達成機能と、集団のまとまりを促す行動をする集団維持機能があります。いずれの機能も強いことがリーダーシップに有効ですが、従業員個人や職場集団の成熟度によってバランスをとることが求められます。すなわち、成熟度が低い段階では目標達成機能を重視して上司から指示を出すのですが、成熟度が高まるにつれて集団維持機能を重視して指示を減らす一方、部下の自主性を尊重して業務遂行の裁量を増やしていきます。

 管理監督者が目標達成機能により部下に指示を出すときは、指示が簡潔であると部下の理解が不十分となり、生産性が低下します。そのため、日常的に計画性を持ち、先が見通せるような明確な指示を出し、その指示の理由も説明することが肝要です。この場合、期限や目標の達成について叱咤激励をしたとしても、部下から反発されることはなく、逆に上司のプレッシャーが部下自身の要求水準を上昇させます。

 この効果を上げるためにも、日頃から部下に対して積極的に声かけをし、部下との信頼関係を構築するとともに、職場集団においては、チームワークや個々の役割を認識させ、同僚間の交流を促進する集団維持機能を強化することが前提となります。

 業務遂行において部下に説明を求める際には、問い詰めるような質問をするのではなく、部下が抱える課題を解決するような問いかけをします。「なんで?」ではなく、「どうすればよいか?」と声かけをするのです。これにより、部下は、言い訳ではなく、対応策にフォーカスした回答ができるようになります。その際には、部下に十分な説明をさせて、その話を傾聴する姿勢が重要です。傾聴は、部下との関係構築だけでなく、管理監督者として必要な業務上の意思決定をしたり、摘示適切に指示を出したりできるようになるので、管理監督者にとっても有用なのです。

 このような声かけにより、従業員個人のモチベーションを向上させることになるでしょう。

 また、時には部下に対してミスを叱責することも必要です。ただし、業務上の指導として必要かつ相当な範囲でなければならず、人格否定をするような発言をしてはならないことは自明のことです。部下の人格を尊重することは当然であるとしても、問題行動自体は咎めなければなりません。その際には、不適切な点を指摘するだけでなく、評価すべき点があればこれもフィードバックすることが肝要です。そして、失敗の原因を具体的に理解させるようにして、同じ失敗を繰り返さないために、どのような対応策を講じるかを指示したり、または部下に検討させたりしましょう。管理監督者としては、部下の課題解決を促すために、適切な情報提供や助言をするのです。

 地道な声かけやポジティブな評価により部下の関係性欲求や承認欲求が充足され、金銭的報酬とは別の心理的報酬を与えることとなり、仕事のやりがいや責任感などの内発的動機付けに繋がります。

 これらの取組みが、従業員個人のモチベーション向上にとどまらず、職場集団のモラール向上にも寄与し、目標達成機能と集団維持機能の双方が有効になるでしょう。

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