クレーム対応における企業側の聞く姿勢

 顧客がクレームを述べるとき、気に入った商品に欠陥があったことに対する裏切られた思いや、提供されたサービスに満足できなかった不満といった感情を抱いています。しかも、商品やサービスにより身体的・精神的な被害を受けた場合、また顧客の個人情報の漏洩によりプライバシーが侵害された場合、顧客は真実を知りたいという気持ちがあります。

 それにもかかわらず、クレームを言ったら担当者から適当にあしらわれたり、ないがしろにされたり、たらい回しにされたりすると、顧客の感情や気持ちがさらに害され、顧客は、企業との信頼関係が破壊されたと考え、紛争に発展します。終始、受け身の姿勢、消極的な姿勢でいると、同様に不信感が生まれる可能性があります。顧客が企業にクレームを述べる段階では信頼関係が揺らいでいる状態ですが、そこから紛争に発展するのは顧客が企業との信頼関係が確定的に破壊されたと感じたときです。

 担当者としては、まず顧客の言い分に耳を傾け、相手の立場に立って気持ちを理解するという傾聴・受容・共感的理解の態度を示すことが必要です。クレーム対応をしていると気が滅入ることが往々にしてあるでしょうが、その内容には相当性があることもあります。ネガティブな気持ちのままでは顧客の真意・要望やクレームの事実・原因を見通す目が曇ってしまいます。これに対し、冷静に話を聞いていれば、クレームの原因や顧客の真意が分かるようになり、解決の方針も見通すことができます。したがって、クレーム対応時には、顧客側の話を素直に聞くという態度が必要です。たとえ規模の小さいクレームであっても、気を抜くべきではないでしょう。

 さらに、仮に顧客のクレームに相当な根拠があったという条件付きで、担当者の個人的な見解であっても顧客の話に共感すると、顧客の方も、自身の言い分を聞いてくれたと思い、被害感情が和らぐことがあります。

 これに対し、担当者の応接態度が悪いばかりか、担当者が私見を述べたり、断定的な言い方をしたり、反論や否定をしたりすると、企業のクレーム対応への不満が昂じて被害感情を悪化させます。そうすると、商品やサービスの欠陥は脇に置かれ、企業の対応に関する二次クレームが発生することになります。二次クレームがインターネット上で拡散すると、企業の信用は低下し、その経済的損失は計り知れません。

 また、顧客によって丁寧な対応をしたり、逆に話も聞かずに追い返したりするなどの不公平なクレーム対応は禁物です。態度だけでなく、解決方針も顧客によって返品に応じたり応じなかったりするというのは、二次クレームとなり、不信感が増幅するおそれがありますし、これがインターネット上で拡散すると企業の信用は低下しますので、留意してください。

 なお、顧客から電話でクレームが入ったときは、正確な記録を残すため、電話で録音をしたり、詳しいメモを付けたりしておくとよいでしょう。ただ、録音やメモしているからといって、顧客との応接態度がおろそかにならないよう留意してください。

 顧客の話を公平な立場で傾聴する姿勢は、すぐに身につくものではないので、従業員教育が必要となります。担当者レベルで対応できないクレームが発生した場合はその上司が対応することになりますが、そのときに上司の態度が悪いとか、部下に適切な指示・支援ができないというのであれば、二次クレームが発生しますので、管理職教育も必要でしょう。その際には、顧客との「信頼」を基礎にしたクレーム対応という基本理念を十分に理解してもらうことが重要です。

クレーム対応に関するその他のQ&A


法律相談をご希望の方へ 労働問題に特化して25年の実績と信頼。弁護士 佐久間 大輔にご相談ください。 電話番号 03-3500-5300 受付時間:平日 9:00~18:00 赤坂見附駅(銀座線・丸ノ内線) 徒歩3分 永田町駅(半蔵門線・有楽町線・南北線) 徒歩5分