商品検査や原因調査の結果、商品に欠陥があったのであれば、クレームには相当な理由があったことになりますので、企業としては陳謝することになります。逆に顧客のクレームが不相当であれば争うことになります。
この「陳謝する事案」か、それとも「争う事案」かという企業責任の有無を決めるのですが、調査結果が判明したら、受け身の姿勢ではなく、顧客側の心情を理解しつつ、裁判に至った場合の影響を予測し、早期に方針を決めましょう。
「陳謝する事案」であれば、早期に情報を開示して、顧客の真意を汲みつつ、代金減額、損害賠償(身体的・精神的な被害があれば慰謝料も含みます)、欠陥の改修や商品の交換、不足分の納入といった示談の申し入れをした方がよいです。
解決案を提案する場合、示談と裁判のラインをあらかじめ引いて交渉することになります。このラインは裁判例をもとに検討することになります。顧客側がラインを大幅に上回った請求をしてくるのであれば示談による解決ができなくても致し方ないでしょう。
「争う事案」であっても、裁判になると企業のイメージダウンにより売上の低下に影響するといった観点から、見舞金や解決金を支払うとの示談を申し入れる等の検討が必要です。
示談交渉や裁判となり、紛争に発展した段階では、顧客との「信頼」だけでなく、危機管理と企業防衛という視点を取り込んで検討しなければなりません。初期段階での「議論をしない」という対応もとる必要はなく、反論すべき点は反論した方がよいです。その場合でも、反論の時期や表現によっては顧客の被害感情が悪化することがあるので、留意してください。
クレーム対応は迅速を第一とすべきですが、だからといって企業が解決を急ぎすぎると、その内容が企業にとって不利なものとなったり、逆に顧客側から解決水準を引き上げられて解決が遠のいたりすることもありますので、弁護士に助言を求めるなどして慎重な検討をしましょう。
担当者は交渉のプロではないので、弁護士に交渉を委任することがよい場合もあります。