被害者も加害者も出さないカスタマーハラスメント対策

 顧客や取引先からのクレームは企業のコントロール外で起こるので、対応が難しくなります。しかし、顧客や取引先、従業員などステークホルダーとの信頼関係を基礎に具体的なケースにおける対応方法を検討すれば、顧客等との紛争の発生リスクを低減することができます。クレームが発生した後に組織的対応ができると、カスタマーハラスメントへの発展を防止するだけでなく、従業員の生産性やモチベーションが向上しますし、従業員のメンタルヘルス不調による休職や退職を減らせます。これにより企業のブランド価値の維持・向上を図ることができるでしょう。

 企業は、組織全体の意識醸成とカスハラ防止体制の整備が喫緊の課題となります。従業員がカスハラをして加害者とならない対応も重要です。このようにカスハラは多面的に対策を講じることが必要となります。

 原則として、クレームが発生したとき、初動は現場対応となります。その場合でも、クレーマーへの対応は単独で行わせるべきではなく、まずは顧客や取引先に複数名で対応し、その主張を傾聴しながら記録を取ることが肝要です。

 とはいえ、現場でクレーム対応の前線に立つ管理職はその道のプロではないので、教育を受けた窓口担当者を選任してクレーム対応に当たらせることが望ましいです。そして、組織内のコミュニケーションを円滑化し、現場内、現場と窓口担当者との間で情報共有をします。これにより組織内で機能横断的に協調をしながら、早期に証拠収集や関係者の事情聴取を実施します。その結果、職場のサポートが促進されて従業員の心理的負荷が軽減されることになります。

 初動後は現場任せにしておくと、対応の遅れや不適切な対応から二次クレームが発生する可能性があります。二次クレームが発生すると解決に時間がかかるので、窓口担当者が対応した方がよいでしょう。

 実際にクレーム対応業務に従事するに当たって、窓口担当者はどのような点に留意した方がよいでしょうか。

 顧客からのクレームを受けたとき、迅速性と誠実性のバランスを図りつつ両方を追求することが重要です。迅速性を重視しすぎると対応が不十分で拙速となる一方、誠実性を重視しすぎると対応が遅くなり、いずれも顧客から二次クレームが発生するからです。

 クレーム対応に当たっては、窓口担当者が「自分は会社の代表」という意識を醸成します。この意識の下で、消極的な姿勢を取らず、能動的に対応策を検討すべきでしょう。クレーム対応を後回しにせず、受け身は禁物です。

 そして、必ず「事件」は解決するという意識を持つことが重要です。これを徹底すると、職場のサポートと相まって、長期化するクレーム対応による心理的負荷を軽減することができるでしょう。

 一方、カスハラにおいては、従業員を加害者にしない取り組みも重要となります。

 従業員が取引先に対して悪質なクレームを付けて加害者になったとき、カスハラによりメンタルヘルス不調となった取引先の従業員から使用者責任を追及されることは否定できません。

 そこで、カスハラをした自社の従業員に対しては、証拠と事実に基づく調査をした上で、懲戒処分を含めた厳正な対処をすることが肝要です。その前提として就業規則においてカスハラを禁止し、この違反を懲戒事由としてあらかじめ定めて周知をしておかなければなりません。また、ハラスメント研修のメニューに加え、定期的に従業員を教育すべきです。

 そして、カスハラを受けた取引先の従業員に対しては、迅速かつ誠実に対応することとし、二次クレームを予防することが重要となります。

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