顧客や取引先からのクレームが増加している現状では、企業のブランド価値、顧客や取引先との信頼関係、従業員の健康という3つの価値を守ることを目標とします。
これを達成するためにも、組織全体の意識醸成とカスタマーハラスメント防止体制の整備が喫緊の課題となります。これにより、従業員の生産性やモチベーションが向上し、メンタルヘルス不調による休職や退職を減らすことができ、企業ブランドの維持・向上が図られます。
クレーム対応の現場をサポートする体制を整備するに当たり、まず、経営者が、カスハラを許さず、自ら防止に取り組むとともに、組織全体の意識を向上させて、カスハラを行わせない、放置しないとの方針を表明することが重要です。トップマネジメントが「顧客が第一」という原則にも例外があることを示すと、カスハラ防止に予算と人員を使ってよいことが組織全体に理解されるようになります。
クレーム自体の発生予防については、リスクの洗い出しをし、クレームの影響度や発生頻度から優先順位づけをした上で、クレーム予防の具体策(例えば自社製品の知識を習得する)を検討します。これをリスクアセスメントといいます。また、サービスの成功または失敗の原因や理由を明確にし、会議や文書などで共有します。特に過去の失敗事例を検証し、改善策や再発防止策を策定した上で、研修において水平展開しておきましょう。
リスクアセスメントや研修において明らかにされたクレームごとに、従業員が持つ属人的なノウハウをマニュアル化しておくと、クレーム対応の質的負担を平準化することにつながり、従業員のストレスが軽減されます。
また、クレームは必ず発生するとの意識を組織全体に醸成しておくと、発生したクレームを迅速に関係者に連絡できるようになります。
それとともに、相談窓口を設けて、従業員に周知します。従業員に対しては、一人で悩まず、相談窓口、上司や同僚に相談することを徹底するとともに、相談しやすい環境づくりも肝要です。そして、相談を受けたら、その相談内容や状況に応じて適時適切に対応することが望ましいです。
そして、クレーム対応を適切に行って顧客との信頼を維持したこと、クレーマーの悪質な要求を受け入れずに適切に解決したことを人事考課の評価項目に入れると、従業員が前向きに取り組むためのモチベーション向上策となります。逆にクレームを受けたこと自体をマイナス評価することは禁物です。
従業員の健康を守る体制の整備をしなければ、安全配慮義務違反を問われることになります。逆にカスハラ防止体制が有効に機能すると、相乗効果により3つの価値が向上することになるでしょう。





