メンタルヘルス不調により休職した労働者の職場復帰の可否については、当該休職者や上司などの関係者から必要な情報を収集し、これを総合評価することが重要です。この判断に当たって人事労務管理部門としては、次の4点に留意します。
第1に、労働者の職場復帰に対する意思の確認です。復職意思を確認するだけでなく、職場復帰支援プログラムを説明し、休職者から同意を得ておくことが必要です。
第2に、主治医からの意見収集です。休職者の同意を得た上で、主治医から治療経過に関する情報や就業上の配慮に関する意見を収集するとともに、産業医からも職場復帰の可否や就業上の配慮に関する意見を取得します。その際には、本人のプライバシーに配慮しなければなりません。
第3に、労働者の状態等の評価です。治療状況や病状の回復状況を確認し、今後の就業に関する休職者の考えを聴き取るだけでなく、通勤時間帯に一人で安全に通勤できるか、会社で勤務できる程度に病状が回復しているか、規則正しい睡眠覚醒リズムを維持しているかなどの業務遂行能力を確認して評価します。その際には、通勤訓練や試し出勤を行ったり、家族からも事情聴取をしたりすることが必要です。
第4に、労働者が復帰する職場環境等の評価です。異動、役割の変化、職場の人間関係から、原職復帰の適否を検討するとともに、復帰する仕事の質や量、作業時間から、職場復帰支援の内容を評価します。各段階において、人事労務管理部門は、管理監督者や事業場内産業保健スタッフと連携することが望ましいでしょう。
必要な情報の収集と評価をした上で、休職者ごとに職場復帰支援プランを作成するのですが、その作成に当たっては、元の就業状態に戻るまでの段階を設定し、その段階に応じた内容や期間、定時勤務が可能であるかなど求められる水準を設定します。プランの作成に当たって人事労務管理部門としては、次の5点に留意します。
第1に、労働者の健康状態や職場の受入準備状況を考慮した上で職場復帰のタイミングを総合的に判断します。
第2に、業務でのサポートの内容や方法、業務の内容や量の変更、治療のための外出許可などを検討します。
第3に、労働時間の短縮、フレックスタイム制や裁量労働制の制限、出張制限、就業場所の変更、作業の転換などの段階的な就業上の配慮の可否・必要性を検討します。
第4に、産業医より安全配慮義務に関する助言など職場復帰に関する意見を聴取します。
第5に、管理監督者や事業場内産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法、就業制限等の見直しを行うタイミング、全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通しを検討します。
メンタルヘルス不調による休職は、情報収集や計画もなしに職場復帰を認めると、精神疾患が再燃・再発して再休職となり、職場復帰が失敗してしまいます。必要な情報を収集して支援プランを作成し、職場復帰後もフォローアップをすることが肝要です。
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