家を人に貸しているけれども、家屋が老朽化したので、取り壊したいといった場合、借家契約を更新拒絶することになります。
賃貸借契約の更新拒絶をするには、期間の定めがある場合は、期間満了の1年前から6か月前までの間に借家人に対してその旨の通知をしなければなりません。この通知をしておかないと、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。一方、期間の定めがない場合は、大家が解約の申し入れをした日から6か月を経過することにより賃貸借契約が終了するので、明け渡してもらいたい日の6か月前に解約の申し入れをすることが必要となります。期間の定めがある賃貸借契約において、上記の期間内に更新拒絶の通知をせずに契約更新されたものとみなされる場合、その期間は定めがないものとみなされるので、更新後でも解約の申し入れをしたら6か月後に賃貸借契約が終了することになります。
しかし、賃貸借契約更新拒絶の通知や解約申し入れをすれば足りるのかというと、そうではなく、正当事由が必要です。正当事由を判断するには、①建物の賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情、②建物の賃貸借に関する従前の経過、③建物の利用状況、④建物の現況、⑤建物の賃貸人が建物の明け渡しの条件として、または建物の明け渡しと引き替えに、建物の賃借人に対して立退料を支払う旨の申出をしたか、といった事情を考慮すると定められています。
建物が老朽化により居住すると危険な状態であり、近隣にも迷惑を及ぼすようなおそれがあれば、借家人の立退を求める正当事由を肯定する事情となります。
これに対し、古いけれどもしっかりした建物であれば、単に老朽化したというだけでは賃貸借契約の更新拒絶に正当事由は認められません。古い家を取り壊してビルを建てて再開発をしたいといった事情であれば、正当事由のハードルは高くなるでしょう。
この場合は、借家人に引っ越し費用や新たに家を借りる費用、次に借りる家の賃料との差額などを補償する立退料をすることで正当事由を補完して、退去を求めることになります。
立退料だけでなく、借家人が店舗や事務所として営業をして収益を得ているか、高齢や病気で次に借りることが困難であるかといった借家人が引き続き家を使用する必要性も考慮されます。これらの例では借家人の使用の必要性は高いと認められ、正当事由を否定する事情となります。
他方、立ち退いてもらわないと高齢の大家には住むところがない、古い家を取り壊して新しい家を建て一部は大家が住み一部は賃貸で収入を得なければならないといった事情があり、借家人が明け渡しをしても生活に困らないのであれば、正当事由が肯定されます。
立退料の金額を算定する基準が定められてはおらず、土地や建物の価格、近隣の市況、借家人側の事情などが考慮されるので、大家が提示した立退料では足りないと裁判所で判断されることもあります。
賃貸借契約を更新拒絶して立ち退きを求める場合、賃貸借契約書、土地・建物の登記簿謄本、図面や写真などをお持ちになり、ご相談ください。