賃貸借契約においては、賃借人が賃料を支払うのが基本的な義務です。この義務を怠ると、債務不履行となり、賃貸人は賃貸借契約を解除することができます。
それでは、賃貸借契約書に条項があれば、1か月分でも賃料の支払いを怠ったり、支払いが遅れたりしたら賃貸借契約を解除できるのでしょうか。
裁判例は、賃貸借契約が信頼関係に基づく継続的な契約であることから、1か月分の支払いが遅れたというだけでは信頼関係が破壊されていないとして、賃貸借契約の解除を認めていません。裁判例の傾向は、3~4か月分の滞納があった場合に信頼関係の破壊を認めています。
大まかな行動基準を示すと、滞納が2か月分になれば支払の督促をするとともに賃貸借契約の解除を警告する、3~4か月分で契約解除を含めた催告をする、6か月超になると支払う意思を疑って速やかに法的手続に着手するといったところです。
賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合、内容証明郵便をもって、通常は7日程度の支払期間を設け、その期間内に支払がなされないことを条件に賃貸借契約を解除するとの通知をします。
通知をしても賃借人が賃料を支払わないのであれば、建物収去土地明け渡しまたは建物明け渡しおよび未払賃料の支払いを求めて訴訟を提起することになります。
裁判上の和解ができないのであれば判決が言い渡されます。判決が言い渡された後でも、賃借人と明け渡しと未払賃料支払いの協議をすることができますが、この協議が調わないときは強制執行をすることになります。強制執行まで行くと、通常、6か月前後の期間を要することになります。
賃料の滞納があった場合、支払を催告する段階から弁護士が行うことができます。滞納が2~3か月分で「要注意」となりますから、弁護士に依頼して未払賃料を催告する内容証明郵便を送ることが考えられます。弁護士に相談なさる際には、賃貸借契約書、土地や建物の登記簿謄本や図面、賃料不払いに関する資料、賃借人に宛てた書面(請求書、催告書等)などをお持ちください。