ある企業名を書籍の題号に入れることは法律に違反するのでしょうか。
企業名が商標登録されているとしたら、商標権侵害が考えられます。
しかし、商標を書籍の内容を示す題号の一部として表示したものであり、自他商品・役務識別機能や出所表示機能を有する態様で使用していないのであれば、登録商標の商標権を侵害しないというのが裁判例の傾向といえます。
商標法26条も、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」には商標権の効力が及ばないと規定しています。
自他商品・役務識別機能や出所表示機能を有する態様で使用しているか否かは客観的に判断されると解されます。企業名を入れた書籍の題号が、書籍の内容を示すために書籍の表紙に表示されているものであり、出版社の商品であることを識別させるための商標として書籍に付されたものではないと判断されるのであれば、商標法に基づく差止め請求は困難となります。
ただし、企業名を勝手に使った挙げ句、誤った記述をして、自社の信用を毀損したなどと主張し、不法行為に基づく損害賠償請求をする可能性はあります。この場合は、事実経過が問題となるので、関係者の事情聴取や証拠の保全など早期に調査を開始することが肝要です。
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