ある県で5年前から商品名「▲▲」の商品を販売し、2年前から県内の消費者に知られるようになり、販売数量を伸ばしていたところ、他県の同業他社より同一の商標で同一の商品について3年前に商標登録出願をしていることを理由に商標権侵害に基づき商標使用の差止めを請求する旨の内容証明郵便が届いた場合、商標使用を中止しなければならないのでしょうか。
同業他社の商標登録出願前から、その出願にかかる指定商品についてその商標を使用していた結果、その出願の際、現にその商標が自己の業務にかかる商品を表示するものとして消費者の間に広く認識されているときは、その商品についてその商標の使用をする権利(先使用権)を有します。ただし、不正競争の目的がある場合や継続してその商品についてその商標の使用をしない場合を除きます。
すなわち、先使用権は、同業他社の商標登録出願前から使用していた事実だけでなく、同業他社の出願時点で都道府県レベルで消費者が自己の商品名であると認識しているという周知性が認められなければなりません。
周知性を具備したのは2年前であり、同業他社が商標登録出願をした3年前の時点では周知性は認められませんので、商標法は先願主義を採っており、先に出願して商標権の設定登録を受けた以上、同業他社の登録商標と同一または類似の商品の商標使用を中止しなければなりません。登録商標に類似する商標についても同様です。
これに対し、周知性を具備したのは4年前であれば先使用権が認められます。ただし、商標権者は、先使用権者に対し、両者の商品の混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができます。同業他社より警告書が届いたら、商標公報において商品区分や商標、出願日を確認した上で、商標登録出願前より周知性が認められること、混同惹起防止の表示を付することを文書にて回答しましょう。
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