経営戦略における4つの構成要素とは?

 経営戦略の構成要素には、ドメイン(事業領域)、資源展開、競争優位性、シナジー(相乗効果)の4つがあります。

 第1にドメインについて、中小企業においては、小さな規模の市場やコア技術を多重利用できる市場(顧客層)を選択し、市場や製品の幅を絞ります。

 これにより、経営資源の選択と集中をします。すなわち、自社の中核機能に経営資源を集中することとし、中核機能以外の機能を外部化(アウトソーシング)したり、非正規社員の活用や機械化(自動化)投資を行ったりするのです。その結果、経営資源の分散と大手企業との競争を回避することができる一方、コア技術の専門性を高めて競争優位性を構築することができ、さらに経営効率が向上します。この場合、経営資源を多重利用する、外部資源の活用によりノウハウやチャネルを獲得することが課題となります。

 また、ターゲットを特定し、少数の販売先を選択することにより、市場からの学習をして組織能力を構築することができます。その結果、顧客関係の強化により既存顧客を維持できる、市場占有率が向上する、自社ウェブサイトや小売店から最終ユーザーの潜在ニーズを収集して製品の開発・改良に反映できるといった効果が得られます。この場合、既存顧客を維持するだけでなく、既存市場内の新セグメントを開拓することが課題となります。

 第2に資源展開について、ドメインや自社保有機能の拡大をする場合、高付加価値化や差別化の観点からサプライチェーンのどこを担うかを検討し、自社で保有する機能を見直して、戦略実行に必要な経営資源の獲得をします。経営資源の獲得には、外部資源による補完(買収、業務提携)や販売チャネルの構築をすることも含まれます。その結果、不足する自社資源を補完して、迅速な事業展開を図ること、顧客ニーズを収集して製品開発に反映することができるようになります。この場合、ITや非正規社員を活用したり、外部資源の活用によるノウハウやチャネルを獲得したりして、経営資源を適正に配分することが課題となります。

 また、コア技術など自社の強みとなる情報的経営資源の多重利用を行います。その結果、シナジーが発生し、顧客ニーズに対応することができます。この場合、物理的な管理資源が拡大することによる経営資源の分散を回避することが課題となります。

 これに対し、自社保有機能の限定をする場合、経営資源の選択と集中をして効率的な経営資源の活用を図ります。強みとなる機能を自社で保有するにしても、保有機能の限定により競合他社から模倣されやすくなるので、組織能力を構築することが課題となります。

 第3に競争優位性について、競合が模倣しにくい、自社ならではの独自な技術領域における能力や、企業活動全般にわたり競合他社に対して優位な事業を展開する組織内部の能力を強化・維持します。そこで、日常業務を通じた顧客ニーズへの対応の中で行われる市場からの学習や、外部資源の活用(連携、提携、協業)によって生まれる組織の活性化を重視することにより、組織能力を構築します。その結果、競合他社がある場合には差別化戦略や集中戦略を成功させ、競合他社がない場合でも先発優位性を獲得することができます。競争優位性は経営資源の選択と集中を前提とするので、小さな規模の市場(顧客層)を選択するか、ドメイン(市場、製品)を絞ります。そして、顧客ニーズを収集できる学習関係を構築すること、ITや外部資源の活用により販売チャネルを構築すること、組織知を蓄積・承継することが課題となります。

 第4にシナジーについて、既存事業と新規事業との連携による市場拡大、既存技術や関連技術の応用、自社製品の一貫生産体制、情報の共有と応用をします。経営資源の多重利用をするので、新規事業だけでなく、既存事業も、売上が増加し、費用が減少するという相乗効果が得られるのです。ドメインや保有機能の拡大を伴うので、相乗効果のある市場を選択すること、経営資源を適正に配分することが課題となります。

 以上の4つの要素から経営戦略を策定し、長期経営計画を作成しましょう。

中小企業の経営戦略に関するその他のQ&A


法律相談をご希望の方へ 労働問題に特化して25年の実績と信頼。弁護士 佐久間 大輔にご相談ください。 電話番号 03-3500-5300 受付時間:平日 9:00~18:00 赤坂見附駅(銀座線・丸ノ内線) 徒歩3分 永田町駅(半蔵門線・有楽町線・南北線) 徒歩5分