不採算事業・店舗の撤退や再建を分析するには?

 不採算の事業や店舗がある場合、まず儲からない理由を把握します。再建策に危惧があるのであれば、撤退するか否かを意思決定するために、貢献利益の多寡を基準とします。すなわち、複数年にわたり、売上高から変動費と事業・店舗ごとの個別固定費を控除した貢献利益を算出し、貢献利益がマイナスであれば本社の共通固定費の全額を賄えないこと、撤退すると個別固定費が発生せずに営業利益が増加することから、数年内に撤退するか否かを意思決定します(中長期的な撤退基準)。なお、限界利益がマイナスであれば直ちに撤退を意思決定します(短期的な撤退基準)。

 これに対し、営業利益が赤字であっても、貢献利益が黒字であれば、まずは共通固定費の削減や貢献利益の増加をすべきであり、撤退するとの意思決定をすることはありません。ただし、貢献利益が黒字でも他の事業との相乗効果が得られない場合、他の事業に経営資源を集中するとの経営方針を定めている場合は、撤退の意思決定をすることになるため、財務面だけでなく、多面的に評価する必要があります。

 他方、不採算の事業や店舗を再建するためには、何よりも売上高を増加させることが重要です。それでは、どの程度の売上高を上げれば営業利益が黒字化できるのでしょうか。これを把握した上で再建計画を作成するために、まず不採算事業・店舗の売上高、変動費や固定費の増減を把握して、損益分岐点比率が100%を超えるか否かを分析を行い、黒字化できる売上高を計算します。

 損益分岐点売上高は、売上高の金額と費用の金額が等しくなる、すなわち利益がゼロとなる売上高をいいます。損益分岐点売上高を算出することにより、いくらの売上高を上げれば営業利益を黒字化できるかが判明します。そして、損益分岐点を下げることができれば、営業利益を生み出しやすくなるのです。

 損益分岐点売上高は、「固定費÷限界利益率」の計算式で算出します。これを導くため、次の要素を用います。

  固定費:販売量や生産量とは無関係に発生する費用
  限界利益率:限界利益の売上高に対する割合
  限界利益:売上高から変動費を控除した利益
  変動費:販売量や生産量に比例して発生する費用

 損益計算書の売上原価と販売管理費の各費目を変動費と固定費に分解すると損益分岐点売上高を計算できます。損益分岐点売上高の実際売上高に対する割合である損益分岐点比率が100%を下回り、営業利益が発生することになります。

 損益分岐点売上高を上回る金額に到達するためのマーケティング戦略を策定します。例えば、顧客に対する製品案内の方法を工夫することで客数や客単価を上げる計画を実行します。

 しかし、中小企業が客数を増やすことは容易ではありません。損益分岐点を下げることは、分子の固定費を下げる、客単価の上昇や変動費率の減少により分母の限界利益率を上げることでも可能です。そこで、製品の高品質化により販売価格を引き上げる一方、コストについては、変動費・固定費とも削減できる費目はないかを洗い出します。例えば、仕入先の変更や在庫ロスの低減などにより仕入代金を引き下げれば変動費を削減できます。特に人件費などの固定費は売上高にかかわらず一定額が発生する費用となりますので、管理費用の削減やオペレーションの改善などにより見直す必要があります。金額が大きい費目から優先に削減できるかどうかを検討していきましょう。

 さらに、組織全体の予算を減らすのではなく、店舗ごとに販売促進策を提案させた上で予算配分を決定することにより、従業員の自発性や協力意識を醸成して売上高の増加に貢献させるという非財務的な方法も考えられます。

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