これまで販売していた事業者向け製品に加えて、今後は消費者向け製品を開発して販売するという場合、複数の市場において事業展開をすることになるので、相乗効果の発生や経営リスクの分散を意識します。
前者については、自社のコア技術を多重利用して成長が見込まれる新規市場に参入することで既存市場においても売上高の増加が期待できること、後者については、顧客ニーズの変化や技術革新に対して既存市場における売上高の減少や費用の増加といった経営リスクを分散させることを期待効果として想定します。
そこで、消費者向け製品については、多くの顧客との関係を構築することが課題となり、顧客との関係強化により、自社の知名度を高めるだけでなく、顧客ニーズを収集します。事業者向け製品については、収集した顧客ニーズを反映させて事業者の要求水準を満たすことが課題となり、そのため技術力を強化するとともに、消費者向け製品の展開により高まった自社の知名度を事業者に対する営業活動に活かすのです。
ところで、消費者向け製品の市場を選択するに当たっては、小さな規模の市場(顧客層)を選択するか、コア技術を多重利用できる市場を基準とします。そこで、大手企業と競合しないか、市場は利益を獲得できる規模か、市場は経営資源を多重利用できる特性があるか、顧客ニーズは強み(知的資産)を活かせるものか、経営資源を集中できるかを事前に調査します。
コア技術に特化して技術の高度化を図ることにより競合他社と差別化し、経営資源を多重利用して製品分野や市場を拡大させます。その際には経営資源を適正に配分する必要があるので、強みとなる機能を自社で保有しつつ、中核機能以外の機能を外部化したり、外部資源を活用して製造開発ノウハウや販売チャネルを獲得したりします。
そして、新規市場へ進出するためには、新たな部署の設置、採用方法の多様化、従業員教育、権限委譲、管理職の交代、部門間の計画的な配置転換、情報共有、成果主義型賃金制度の導入などの組織面の対応策も必要となります。