一社下請から元請受注に転換できるか?

 長年にわたり特定の元請企業より繰り返し受注をしている部品加工業のような下請企業においては、メリットとして、生産設備の稼働率が安定する、元請企業より技術指導を受けられ、技術的経験を蓄積できる、取引先の要望を満たす加工技術力を維持すればよく、独自に製品の企画や開発をする必要がない、商社などの販売チャネルを構築しなくてよいことが挙げられます。

 しかし、下請企業のリスクとして、元請企業との力関係が弱いので、条件変更などの交渉をしにくいばかりか、景気の変動、取引先の業績悪化や海外移転により、受注量の減少や受注単価の値引き要請が経営危機を招くことがあります。

 そのため、特定の元請企業との取引依存度を下げることが経営戦略として考えられます。すなわち、取引先数や取扱分野を増やしたり、付加価値の高い事業を拡充したりして、自社で元請受注をすることにより、賃加工型の下請体質から脱却するのです。

 そこで、経営者は、環境分析をした上で、目先の課題解決だけでなく、本質的な経営課題に向き合うことが必要です。

 また、特定の元請企業との取引依存度が高いままで環境変化や業績低下が緩やかに進行していると、自社の組織がそれに適応してしまい、経営改革のきっかけがつかめなくなるという組織面の問題点もあります。

 そこで、経営者は、改革の必要性を組織全体に周知するとともに、組織変革をトップダウンで取り組むことが必要です。組織変革の一例として、▽採用方法を多様化して経営改革を実現していく有能な人材を確保する、▽従業員教育を継続する、▽従業員に権限を委譲して、従業員主導で製品開発や品質維持、販売活動を継続する、▽管理職を交代させ、外部人材、女性や若手を管理職に登用する、▽部門間の計画的な配置転換を実施して人的・情報的資源を多重利用する、▽コミュニケーションの円滑化や情報共有により部門間の交流を促進する、▽給与や賞与に業績や成果を反映させることなどが挙げられます。

 経営改革はトップダウンで方針を決定するとしても、従業員に十分な説明を行い、従業員の理解を得なければ、意識は醸成されず、モチベーションの向上にも繋がりません。経営改革を従業員主導で推進し、従業員の意見を反映するというボトムアップも必要です。これにより組織が活性化し、環境変化に対応した意思決定を迅速かつ柔軟に行うことができます。

 この組織的対応力を強化することが、既存市場のシェア向上、新規市場への進出や事業の多角化といった成長戦略を軌道に乗せる鍵となるでしょう。

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