新規製品を開発するに当たっては、販売チャネルの構築も両輪で検討しなければなりません。特に新規市場へ進出する場合は、自社の保有するノウハウだけで新規顧客を獲得することは困難ですので、ITや外部資源を活用して販売チャネルを構築します。
ITを活用し、自社ウェブサイトにおいてオンライン販売をする場合、メリットとして、直営店での販売と異なり、顧客は24時間・365日オンラインショップに訪れることができるので、時間的な制約がない、インターネットに繋がればどの地域からでもアクセスできるので、市場や商圏が全国に拡がり空間的な制約がない、オンライン販売情報や顧客のコメント機能を活用して新規製品を企画できる、消費者に直接販売するので、収益性が高い、小売店に比べて販売費が相対的に低い、キャッシュレス決済への対応により既存顧客の離反を防止し、売上高を維持できることが挙げられます。
ただし、小売店や直営店を合わせた複数の販売チャネルに伴う受注や発送などの業務量や販売管理にかかるコストの増加を招き、また、キャッシュレス決済では決済手数料を負担しなければならないので、客単価によっては収益性が低下する可能性があります。これは店舗販売とオンライン販売の複数チャネルやキャッシュレス決済に伴う付随的なデメリットですので、店舗販売を縮小することにより人件費等を削減する一方、オンライン販売への資源集中により業務を効率化して売上高の増加や管理費の削減を図ることで解決することはできます。
オンライン販売を強化するに当たっては、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することが考えられます。DXは単に社内業務をデジタル化するだけでは足りず、▽デジタル化に合わせて業務プロセスや社内ルールを変更して社内環境を整えること、▽中小企業には、アナログな文化や価値観が定着している、明確な目標が定まっていない、ITリテラシーが不足しているとの問題点があるため、デジタル化に関する全社的な意識の醸成や経営者の主導によりデジタル化に向けた組織変革に取り組むことが必要です。これらの取組みにより、管理費の削減効果を高めることもできるでしょう。
より本質的なデメリットとしては、販売が容易ではないため競合他社との価格競争に巻き込まれることがあります。
その対応策として、まず既存顧客とのコミュニケーションを強化します。既存顧客と個別対応をすることにより顧客ロイヤルティを向上させて、平均購買単価の上昇、購買頻度の増加、継続購買期間の長期化に繋げます。
顧客生涯価値を上げる施策の前提として、顧客情報をデータベース化します。情報項目は、顧客の氏名や住所だけでなく、利用履歴、好み、デザインに関する文字・画像情報も含まれます。この顧客情報を活用し、結婚式などイベントのテーマに応じた商品提案や、節目需要である誕生日・七五三・卒業式などの雰囲気に合わせた商品提案を文字・画像情報として定期的に送信するなどの方法が考えられます。
次に既存顧客層とのコミュニケーションを強化します。自社ウェブサイトにおいて、既存顧客層(見込顧客を含みます)に対し、自社の技術や製品の品質・機能を開示し、顧客から幅広い用途のアイデアを募り、ユーザー投票により製品化候補を決定するなどの方法が考えられます。この場合、自社ウェブサイトや広告において、得票上位の製品であることを訴求することにより、既存顧客の継続購入や見込顧客の新規購入に繋げます。
以上はプッシュ型ですが、プル型のプロモーションとして、自社ウェブサイトにおいて、自社の技術や製品の品質・機能だけでなく、経営理念や自社が意識している社会課題、共同開発や業務提携をする企業の名称、共同開発した製品の特徴(原材料を含みます)や画像を掲載することにより、企業イメージを高めましょう。