使用者は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して10日の年次有給休暇(年休)を与えなければなりません。その後は1年間について8割以上勤務すると、翌年に年休の付与日数が1日プラスされ、勤続が2年6か月を超えた後はさらに1年ごとに2日ずつ増え、20日を最高限度とします。
年休を有効に活用し、その取得促進を図ることを目的として、日単位による取得のほかに、労使協定により5日の範囲内で時間を単位とする年休(時間単位年休)を取得することができることになっています。労働者の利便性を図るためにも時間単位年休を導入することをお勧めします。
時間単位年休を導入するには、まず労使協定を締結します。労使協定の内容は、①対象労働者の範囲、②時間単位年休の取得日数(例:5日)、③1日分の年休の時間数(例:8時間)、④時間単位年休の取得単位(例:1時間)の4つです。
労使協定では、時間単位年休の対象労働者の範囲を定めることができます。例えば、一斉に作業を行うことが必要とされる業務に従事する労働者、工場のラインで働く労働者を対象外としたり、パートタイム労働者(正社員と同視される者を除く)を時間単位年休の対象外としたりすることはできます。これに対し、時間単位年休の対象を育児・介護を行う労働者に限ることは、取得目的による制限となり、できません。
1日の時間数は1日の所定労働時間数を下回らないものとされているため、分単位の時間数は時間単位に切り上げなければなりません。例えば、1日の所定労働時間が7時間45分で5日分の時間単位年休が付与される場合、1日の時間数は所定労働時間7時間45分を切り上げて8時間とし、その5日分である40時間分ということになり、7時間45分×5日=38時間45分を切り上げて39時間とはなりませんので、注意を要します。また、例えば、1日の所定労働時間が8時間である者と6時間である者とに分かれている場合は、労働者の所定労働時間数ごとにグループ化して時間単位年休の労使協定を締結することができます。
上記の4項目に加え、時間単位年休1時間分の賃金額(例:通常の賃金)や半日単位の年休との併用などを就業規則に定めましょう。
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