労働契約法は、同一の使用者との間で締結された2つ以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、無期労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなすという無期転換ルールを定めています。
これが原則ですが、特例が3種あります。第1に、大学の研究者などについて、無期労働契約に転換する期間を5年から10年に延長するというものです。大学の研究者に限らず、大学や研究開発法人の研究者・技術者、科学技術に関する試験・研究・開発または成果の普及・実用化にかかる運営管理業務に従事する者、大学や研究開発法人との共同研究開発に専ら従事する民間企業の研究者・技術者、共同研究開発等にかかる運営管理業務に専ら従事する民間企業の労働者も対象となります。
第2に、5年を超える一定の期間内に完了する業務に従事する高収入(年収1075万円以上)かつ高度な専門的知識、技術、経験を有する有期契約労働者について、期間限定の業務が完了するまでの期間(上限10年)は無期転換申込権が発生しないというものです。高度専門労働者は、博士の学位を有する者、特許発明の発明者、登録意匠の創作者、ITストラテジスト・システムアナリスト・アクチュアリーの資格試験に合格している者、実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニア、デザイナー、システムコンサルタントなどです。ただし、恒常的に継続する業務、期間限定の業務に従事しなくなった場合、年収が1075万円未満となった場合は特例の対象となりません。また、業務完了後に有期労働契約を更新する場合は無期転換申込権が発生しますので、留意してください。
第3に、定年後に同一の事業主またはこの事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主(子会社、親会社、関連会社等)に引き続いて雇用される高齢者について、定年後に同一事業主等に引き続いて雇用されている期間は無期転換申込権が発生しないというものです。
第2の高度専門労働者と第3の継続雇用労働者は、前者について労働者が自らの能力の維持向上を図る機会の付与等、後者について労働者に対する配置、職務、職場環境に関する配慮等に関する雇用管理措置計画を作成し、厚生労働大臣の認定を受けなければなりません。この措置の内容を就業規則や労働契約書にも明記した方がよいですし、無期転換の特例が適用されること、無期転換申込権発生までの期間も定めておきましょう。
そのため、正規労働者、有期契約労働者、無期転換労働者の3種の就業規則を作成する必要があります。正規労働者を対象とした就業規則を作成しているだけで、その適用範囲を明確にしていないと、非正規労働者にも適用されることになりますので、留意してください。
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