休職は労働基準法や労働契約法に規定がありませんので、就業規則に定めなければなりません。労働者が病気により働けない状態になっても、就業規則の規定がなければ、原則として、休職命令を発することはできません。
就業規則に規定がないからといって、病気の労働者をいきなり解雇しても、休職制度が広がってきている状況では無効となる可能性があります。使用者にとっても、病気を治して働いてくれるならば、業務に精通した労働者を解雇するのではなく、いったん療養に専念してもらった方がよいでしょう。
そこで、就業規則に、休職の要件、休職期間、休職中の賃金等の処遇などを定めることをお勧めします。
傷病休職は、労働者が連続欠勤をしたときに開始されることが多いですが、その連続欠勤の期間は一般的に2~6か月間です。就業規則において、連続欠勤だけでなく、断続欠勤を繰り返す場合も欠勤日数を通算するようにした方がよいです。特に精神障害においては、断続欠勤を繰り返す場合が多いので、通算規定を設けておく必要があるからです。ただ、休職は昇給・昇格が遅れたり、勤続年数に算入されなかったりするなど労働者に不利益な処遇を受けることになるので、形式的な判断を回避するため、就業規則において、断続欠勤の通算日数が基準に達するだけでなく、「回復に期間を要する」という要件を加えておきましょう。回復に期間を要する場合であれば、就業規則において、欠勤をしていなくても傷病により通常業務が遂行できない場合は休職にできるようにしておきます。
休職期間は、形式的な期間設定を回避するため、傷病の内容や程度により柔軟に定められるようにするとよいです。ただし、短期の休職を繰り返すことを防止するため、就業規則に回数制限を設けておきましょう。
さらに重要なことは、労務管理上定期的な報告を求める旨の規定を就業規則に設けておくことです。休職中の健康状態や生活状況を把握したり、復職可否判断の材料としたりするために必要です。ただし、疾病の状況等に応じて柔軟に対応することとし、休職者に無用の負担を課すべきではありません。
詳しくは、拙著「管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務」の第5章「メンタルヘルス不調の人事対応マネジメント」で論じていますので、併せてご参照いただければ幸いです。
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