配置転換(配転)について、最高裁判例は、就業規則に配転の定めがあり、実際に配転が行われるという前提で労働契約が締結されれば、労働者の個別同意がなくても、使用者は配転命令権を有すると判断しています。
他方、出向は労務提供先が変わるので、労働者の同意が必要となります。最高裁判例は、労働者が同意していない関連子会社への出向の適否が争われた事案につき、在籍したまま出向する場合があることを就業規則で規定されており、労働協約でも賃金や地位など出向者の利益に配慮して詳細に規定されていたことから、著しい不利益がなければ、使用者は出向時に労働者の個別同意がなくても出向を命令できると判断しました。この最高裁判例からすると、就業規則において具体的かつ明確な規定があれば、包括的な事前同意があったとされることになります。これに対し、就業規則に「出向を命じることができる」という抽象的な規定しかなかったり、就業規則の休職の一事由として出向を定めていたりするだけでは足りず、このような規定しか整備せずに出向命令を発しても無効となる可能性があります。
そこで、使用者としては、就業規則において、①出向事由、②出向先、③出向期間、④内示から発令までの期間、⑤出向先での労働条件(給与・賞与、昇給、昇格)、⑥出向中の勤続年数算入、⑦出向中の出向元での所属、⑧復帰時の職場(原職)など出向者の利益に配慮した詳細な規定を設けておく必要があります。特に賃金制度について出向先と出向元との間に格差がある場合は、出向元がその格差を補填する必要があります。
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