マイナンバー制度と情報の利用目的や非開示義務

 マイナンバー(個人番号)制度が開始されたことに伴い、事業主は個人番号取扱事業者となり、社会保障、税、災害対策の行政手続を行うために、全従業員(派遣労働者を除く)とその扶養親族から個人番号を取得しなければなりません。

 個人番号の提供を求める時期は、労働契約を締結した時か勤務が開始される時となります。採用内定の段階でも確実に雇用されることが予想される場合(正式な内定通知がなされ、入社に関する誓約書を提出した場合等)であれば個人番号の提供を求めることができます。

 個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に対し、個人情報の利用目的を特定することを義務づけています。個人番号でいうと、社会保障の場面では、健康保険や厚生年金保険の届出事務、雇用保険や労災保険の届出事務などがあります。税の場面では、源泉徴収票作成事務などがあります。個人番号を含む氏名、生年月日等の個人情報(特定個人情報)を利用すると予想される事務の全てを就業規則で具体的に特定しておいた方がよいでしょう。ただし、就業規則では、個人番号の提出先を具体的に示す必要はありません。

 なお、個人番号の利用は法律で限定されていますので、従業員の営業成績を管理する目的で個人番号を利用することはできませんし、個人番号を社員番号として流用することもできません。

 個人情報取扱事業者は、個人情報保護法上、利用目的を具体的に特定した上でその通知をしなければなりませんが、面談での告知、文書の交付、電子メールやFAXでの送信も通知方法として認められるものの、端的に就業規則に利用目的を定めてこれを交付するか、閲覧させればよいでしょう。

 個人番号取扱事業者が従業員本人から個人番号を取得する際には本人確認をしなければなりません。個人番号カード、通知カードおよび運転免許証またはパスポート等、住民票写しおよび運転免許証またはパスポート等のいずれかの提示を受けることになりますが、これも就業規則に定めておくとよいでしょう。

 また、就業規則において、企業秘密保持義務を課している企業は多いですが、個人番号は企業秘密そのものではありません。ですから、就業規則に、特定個人情報の非開示義務も追加しておくことが肝要であり、違反した場合は懲戒処分を課すことは検討課題となります。

 なお、別途誓約書を取得している場合は、企業秘密保持と同一の書面でもよいですが、秘密保持の対象は企業秘密と特定個人情報を区別することになります。誓約書のサインをめぐって、労働者が不信感を抱いたり、紛争に発展したりするケースがあります。形式的に指示するのではなく、必要性があればそれを説明することが肝要です。

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