気管支喘息の労働者から、「感染症が最も危険であるため、社内の空調や温湿度について労働安全衛生対策を講じてほしい」との要望が出た場合、事業者はどの程度の対策を講じればよいのでしょうか。
労働安全衛生法は、事業者に対し、健康障害防止措置を講じ、また、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全ならびに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難および清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀および生命の保持のため必要な措置を講じなければならないと定めています。
具体的な職場環境整備措置は労働安全衛生規則が定めています。空調や温湿度、飲料水、休憩室以外にも、労働安全衛生規則には通路、床面、照度、照明、清掃、便所、食堂および救急用具などの措置が定められています。
第1に空調について、労働者を常時就業させる屋内作業場においては、窓その他の開口部の直接外気に向って開放することができる部分の面積が常時床面積の20分の1以上になるようにしなければなりません。ただし、換気が十分行われる性能を有する設備を設けたときはこの限りではありません。なお、事業者は、労働者を常時就業させる屋内作業場の気積を、設備の占める容積および床面から4メートルを超える高さにある空間を除き、労働者一人について、10立方メートル以上としなければなりません。
第2に温湿度について、事業者は、暑熱、寒冷または多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければなりません。そして、作業の性質上給湿を行うときは、有害にならない限度においてこれを行い、かつ噴霧には清浄な水を用いなければなりません。
気管支喘息の労働者が感染症を予防するため、事業者がどのような措置を講じたらよいのかについては、最低限、労働安全衛生法令を遵守した措置を講じることが必要ですが、最低基準を上回る職場環境を形成するため措置は、当該社員の疾病の内容や程度、他の社員の健康状態、会社の業種や作業環境などに照らし、具体的に検討する必要があります。その際には衛生委員会を活用することをお勧めします。
事業者は、事業場規模ごとに衛生委員会を設置し、衛生に関する事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせる義務があります。
衛生委員会を開くだけでなく、衛生管理者と産業医が作業場等を巡視し、衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じるとともに、衛生委員会で巡視結果をもとに審議することが肝要です。
人事部が一方的に決めるのではなく、衛生管理者や産業医と協力して職場を巡視したり、社員に対するアンケートを実施したりして、感染症予防のための課題を把握し、適当な対策を衛生委員会において審議した方がよいでしょう。
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