メンタルヘルス不調の発生防止義務
使用者は、その雇用する労働者が業務の遂行過程において過度の疲労やストレスを蓄積して心身の健康を損なうことがないよう必要な措置を講じるべき安全配慮義務を負っています。メンタルヘルスケアも安全配慮義務の内容に含まれます。そのような義務を怠って、労働者がメンタルヘルス不調により休職・退職や自殺をしてしまったら、使用者は損害賠償責任を負うリスクがあります。
使用者は、安全配慮義務の履行として、メンタルヘルス対策を立案・実行することが重要となります。そのために事前に講じる義務として、メンタルヘルス対策の計画を策定し、相談窓口など体制を整備するとともに、計画に基づき教育や職場環境の改善に取り組む義務があります。
一方、メンタルヘルス不調が発生した後に、この増悪や再発を防止して、被害の拡大を回避する義務も安全配慮義務の内容となります。
人事労務管理スタッフは、管理監督者だけでは解決できない人員配置や配置転換等が労働者の精神的健康に及ぼしている影響を把握し、労働時間等の労働条件の改善と適正配置を講じるという役割があります。そこで、管理監督者が履行すべき職場レベルの義務以外は、使用者の義務履行を補助する立場にある人事労務管理スタッフが履行しなければなりません。これを怠った結果、メンタルヘルス不調が発生した場合、人事労務管理スタッフの義務違反を理由に使用者が損害賠償責任を負うことがあります。
メンタルヘルス不調の増悪防止義務
メンタルヘルス不調を予防するためには、職場のストレス要因の除去・低減だけではなく、労働者の体調不良を早期に発見し、早期の治療に結び付けることが重要となります。
増悪防止義務の具体的内容として、心身の健康相談やカウンセリング、休暇の取得、業務の軽減、心身の状態に適した配属先への異動などの措置を講じる義務が裁判例で認められています。このことはうつ病の再燃・再発においても同様といえます。ただし、カウンセリングの実施だけでは業務を軽減したことにはならず、健康状態を把握した上で適切な措置を現実に講じることが必要となります。
また、メンタルヘルス不調が発生したら、その原因を究明して、再発防止策を策定することも、人事労務管理スタッフに求められています。
詳しくは、拙著「管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務」の第3章「メンタルヘルス不調の防止マネジメント」で論じていますので、併せてご参照いただければ幸いです。
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