従業員のメンタルヘルス不調を予防するための人事対応

 仕事の要求度が高く、または裁量度が低い場合、うつ病などのストレス関連疾患を発症させるリスクが高まります。

 ストレス要因が日常業務にある場合でも、それが具体的な状況によって過重負荷の要因に変化しているときは要注意です。仕事内容の変化は精神障害の労災認定件数が多い出来事となっており、管理監督者はこの変化を見逃さずに適切に対応することが求められます。日常業務であるからといって過重でないと評価されるわけではありません。日常業務それ自体が過重になったのであれば、その是正措置を講じたり、適切なサポートをしたりしならないのです。

 しかし、全ての管理監督者が部下の業務遂行状況や健康状態の変化を見極めることができるとは限りません。人事労務管理スタッフとしては、このスキルを身に付けさせ、管理監督者が適切な支援方法につなげられるよう継続的な教育をすることが必要です。

 メンタルヘルス不調が業務に起因するのであれば、就業上の措置を講じます。例えば、相談の結果、配置転換が必要となることがあります。だからといって、当該労働者に説明もなく拙速に実行しようとすると、本人のストレスを軽減させるとの期待効果が減退してしまいます。人事労務管理スタッフは、配置転換をする際に丁寧な説明を尽くし、本人の不安を取り除くことが肝要です。

 管理監督者が部下とのコミュニケーションを図れば当然に発見できる変化を見逃して、就業上の措置を実施することなく、部下がうつ病を発病して自殺したというのであれば、使用者は損害賠償責任を免れません。とはいえ、管理監督者自身がプレイングマネージャーとして動き回っていれば部下とのコミュニケーションの時間を確保することが難しいのが実情です。人事労務管理スタッフとしては、管理監督者が目配りできるよう、マネジメントに専念できるようにしたり、人員配置や組織体制を見直したりするなどの措置が必要となります。

 また、業務の具体的状況が変化した場合だけでなく、昇進など職位の変化に伴い、業務内容、責任や権限が変化する、配置転換により未経験の業務に従事するという場合は、ベテランの労働者でも、知識不足がストレス要因を誘引する一方、ストレス対処能力が十分でないことがあるので、職場での支援状況によっては人員配置の見直しも必要となります。

 使用者は、精神障害の発病後も、その悪化を回避するための安全配慮義務を負います。悪化防止義務の具体的内容として、心身の健康相談やカウンセリング、休暇の取得、業務の軽減、心身の状態に適した配属先への異動などの措置を講じる義務が裁判例で認められています。このことはうつ病の再燃・再発においても同様といえます。ただし、相談やカウンセリングの実施だけでは業務を軽減したことにはならず、健康状態を把握した上で就業上の措置を現実に講じることが必要となります。

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