障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)は、差別的取扱いの禁止や合理的配慮措置を定めています。以下では、精神障害について述べます。
障害者雇用促進法は、障害者に対する差別を禁止し、募集・採用において、障害者に対して障害者でない者と均等な機会を与えなければならない、また、賃金・教育訓練・福利厚生その他の待遇について、障害者であることを理由に障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならないと定めています。例えば、前者では、精神障害などを理由として採用を拒否することは許されません。後者では、賃金を引き下げる、低い賃金を設定する、昇給をさせない、研修・現場実習を受けさせないといった取扱いが禁止されます。
また、障害者に対する合理的配慮をしなければならず、障害者雇用促進法は、労働者の募集・採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない、また、障害者でない労働者との均等な待遇の確保または障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないと定めています。
ただし、合理的配慮措置が事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合は実施が義務づけられることはありません。「過重な負担」に当たるかどうかは、事業活動への影響の程度、実現困難度、費用・負担の程度、企業の規模、企業の財務状況、公的支援の有無などの事情を考慮して判断されます。とはいえ、合理的配慮措置を実施しない場合は、過重な負担に当たる旨およびその理由を障害者に説明することが必要でしょうし、障害者の意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮の措置を講ずることも必要です。事業主としては、合理的配慮措置について、精神障害の場合、出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮するなど、障害の内容や程度、障害者の意向を勘案して就業規則に定めるか、または障害者ごとに本人と協議して具体的な措置について合意した上で労働契約書に定めましょう。
また、雇用する障害者からの相談に対応するための体制を整備し、周知することも重要です。
詳しくは、拙著「管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務」の第3章「メンタルヘルス不調の防止マネジメント」で論じていますので、併せてご参照いただければ幸いです。
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