事業承継において、相続や遺言は、経営者の死亡により承継がなされるものですが、生前に後継者に対して株式や事業用資産を承継させる方法もあります。その一つが売買です。
売買においては、買主が売主に売買代金を支払うので、有償の契約になります。ですから、買主である後継者が代金を準備しなければなりません。この資金調達が売買のデメリットともいえますが、資金を出さない遺言や贈与とは違い、時価より不相当に低い金額で売らなければ、後継者とならない相続人より遺留分侵害額請求を受けることを避けることができますので、逆にメリットとなります。そこで、株式等の時価が低い場合は、親族内承継においても積極的に売買を採用した方がよいです。
これに対し、不相当な対価をもってした売買については、売主と買主が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合は、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなされ、遺留分侵害額請求を受けることになります。そのため、例えば株式においては、純資産価額方式や類似業種比準方式等により公正に価額を評価しなければなりません。
また、あくまで契約ですから、売主である経営者の生前に行わなければならないのですが、まさに、この生前に承継が完了していることが売買の特長といえます。生前に承継を完了させるのであれば計画的に実行できますし、経営者が病気にかかって経営に携われなくなったとしても慌てずにすみます。何よりも後継者の地位が安定することもメリットでしょう。
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