遺留分の特例を使うには?-除外合意

 民法では、株式の生前贈与は遺留分算定の基礎とされます。これを修正したのが、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)です。

 事業承継において、相続の開始が円滑な事業承継を阻み、後継者の地位が不安定とならないよう、遺留分に関する民法の特例を設けたのが、「除外合意」です。

 経営者の相続人および後継者は、その全員の合意をもって、書面により、当該後継者が経営者からの贈与等により取得した中小企業の株式について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないとの合意(除外合意)をすることができます。後継者には、相続人だけでなく、それ以外の親族や役員・従業員も含まれます。

 ただし、完全無議決権株式(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式)については、除外合意の対象から外されています。

 また、後継者が所有する株式のうち除外合意を除く議決権の数が総株主の議決権の過半数となる場合は、除外合意をすることはできません。例えば、後継者が総株主の議決権の51%に相当する株式を所有していた場合は、安定多数を確保するために経営者から議決権の25%に相当する株式の贈与を受けたとしても、その贈与分の株式を除外合意することはできません。

 さらに、株式以外の財産についても除外合意をすることができます。この財産の種類に関する定めはありませんので、事業用資産を広く除外合意の対象とすることができます。事業用資産を贈与するのであれば、この除外合意をすることが考えられます。完全無議決権株式については、事業用資産として除外合意の対象とすることができます。

 株式以外の財産に関する除外合意は、株式に関する除外合意と併せて、相続人と後継者全員の合意をもって、書面により行わなければなりません。したがって、単独で事業用資産や完全無議決権株式に関する除外合意をすることはできません。

 個人事業主についても、その相続人と後継者が、その全員の合意をもって、書面により、事業用資産に関する除外合意をすることができます。

 除外合意が有効となると、株式や事業用資産の贈与が遺留分を算定するための財産の価額に算入しないものとされます。その結果、後継者とならない相続人は遺留分侵害額請求をすることができなくなります。

 これにより、中小企業の株式や事業用資産の贈与についての遺留分制度の弊害を取り除くことができます。

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