中小企業においては親族から後継者を選定することが多いですが、親族内で適当な後継者がいなければ、企業内(役員、従業員)、外部(取引先、金融機関)から後継者を選定することになります。
親族内承継や従業員承継を行うためには、「経営の承継」として経営者としての地位、「知的資産の承継」としてノウハウ、人脈、人材、技術、ブランドおよび顧客・取引先との関係、「資産の承継」として中小企業の株式、事業用資産(不動産、現金・預金など)を、後継者に対して円滑かつ集中して承継しなければなりません。
特に「資産の承継」については、経営者は、生前に事業承継を行うために必要な贈与や遺言その他の相続対策を完了しておくことが望ましいです。そのためにも、後継者が株式や事業用資産の購入資金を準備したり、贈与税や相続税の納付資金を準備したりしなければなりません(ただし、納税猶予の特例があります。)。中小企業が第三者から株式を購入することもあり、資金の調達をする必要があります。
また、「経営の承継」を円滑に進めるためには、単に代表権や社長職を委譲するだけでなく、後継者を経営者が現役のうちに決め、その教育をしなければならず、後継者には経験を積ませつつ、段階的に権限を委譲していくことが考えられます。
その際には、親族、役員、従業員、取引先、金融機関などの関係者の理解を得る必要もありますので、事業承継には時間がかかります。
そこで、事業承継は、早期に着手し、かつ計画的に実行するのが肝要です。
事業承継を計画的に進めていくには、まず中小企業の経営資源や経営環境、株主の構成や持株割合、後継者候補の能力、経営者や後継者の資産・負債等の現状、さらに経営課題を分析します。そして、事業承継に向けた経営改善を実行することが必要です。
もし後継者候補が見つからなければ、株式譲渡、事業譲渡や会社分割などのM&Aにより第三者に経営してもらうことが考えられます。M&Aであっても、雇用の確保や取引先の維持が図られて中小企業の事業活動の継続に資するものであり、さらに売却代金により経営者の生活資金が確保されるのであれば、検討課題となり得ます。M&Aを決断する前から、経営の磨き上げを行い、企業価値・事業価値を向上させておきましょう。
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